2025年は、主要資産の中でもバツグンの成績を残した金(ゴールド)。年初比で1.5倍以上になっており、今から投資するか悩んでいる人も多そうだ。そこで、今回は金価格の2026年の見通しを、貴金属に詳しい専門家が予測! また、金ほど話題になっていないものの、実は金価格以上に上昇しているプラチナ・銀の値動き予測も公開するので、投資の参考にしてほしい!(ダイヤモンド・ザイ編集部)

「ダイヤモンド・ザイ」2026年2月号の「2026年【株】全予測&儲け方」を基に再編集。データはすべて雑誌掲載時のもの。

2026年も金価格は上昇し、5000ドル台到達も!
米国の財政懸念などで金への逃避が加速する?

 2025年は、金(ゴールド)が大いに上昇した年だった。10月には史上最高値(1トロイオンス=4381ドル)を更新したが、これは年初比で62%の上昇。そこから多少下落したものの、11月末には年初比で58%上昇となっている。米国の主要株価指数S&P500は年初から14%上昇、日経平均株価は28%上昇、ビットコインはマイナスだったことを考えると、主だった資産の中で金の好調ぶりが目立った形だ。

 背景には、地政学的な分断で新興国の中央銀行がドルを売り、金を買う動きを加速させていることがある。貴金属スペシャリストの池水雄一さんは「2023年以降、世界の中央銀行による金の購入は年間1000トン超に。これは、年間生産量の約3割にも及び、価格を押し上げています」と話す。

 加えて、機関投資家の需要が高まっている。金は金利を生まないため、これまで投資対象として選好されてこなかったが「機関投資家の需要が高まりつつあります」(ピクテ・ジャパンの塚本卓治さん)。

 というのも、「金の圧倒的な成績を見て、持たざるリスクが意識されるようになりました。欧米のファンドマネージャーや日本の投資家が一斉に買い、2025年9月からの急上昇につながりました」(池水さん)。

 この潮流は2026年も続きそうだ。楽天証券経済研究所の吉田哲さんは、代替資産としてのさらなる需要の高まりに注目する。「米国の利下げによるドルの魅力低下で、金買いの流れは継続するでしょう。さらに株価が割高すぎることへの不安から、株の代わりとしての需要も高まりそう」(吉田さん)

 マーケット・ストラテジィ・インスティチュート(MSI)の亀井幸一郎さんは、2026年11月の米国の中間選挙に向けた動きに注目する。「米国内の政治的分裂に加え、財政問題が懸念事項。ドルへの信認を揺るがし、安全資産である金への逃避を促しそうです」(亀井さん)

 さらに、亀井さんは別のリスクも指摘。プライベートクレジット(投資ファンドによる直接融資)など、水面下に隠れていた不良債権問題の浮上だ。問題が表面化すれば、さらに金価格を押し上げる要因となり得る。

 こうした事情を踏まえて、2026年の金価格について、プロの見通しはいずれも「強気」。1トロイオンスあたり3700ドルを底値として、高値は5000ドル付近を見込む声が多かった。

 なお、金の需要増は長期的な構造として続きそうだ。池水さんは「金価格の上昇が続いていますが、金自体の価値が上がっているのではなく、現金の価値が下がっています」と指摘する。

 経済拡大のため政府債務を膨らませ、現金を大量に発行し続ける限り、この流れは止まらない。米国の利下げや日本の高市政権による財政出動が見込まれるが、こうした政策はインフレを加速させ、さらなる現金の希薄化と金価格の上昇をもたらす。「過去50年間で、金の価格は117倍になりました。この先の50年で、さらに100倍になる可能性があります」(池水さん)

 地政学リスクの高まり、ドル離れの加速、貨幣価値の希薄化と、二重三重の要因が、長期で金価格を上昇させていきそうだ。