残業代も口約束だけで支払われない。通勤費などの交通費が減額されていったのも、求人票の条件とは違う。

 しかし、こんな職場環境にもかかわらず、誰からも反対の声が出なかった。

 どうして労基署などに訴えないのか?と聞くと、高城さんはこう答える。

「労基は、長時間勤務の職場が多すぎて、査察に入れないんです。従業員の誰かが告訴でもしない限り…」

 そんな状況が放置され続けていること自体、なかなか想像ができない。

“次がない”中高年がターゲット
相場の半分で使い倒して辞めさせない

 結局、同社に来るのは、ハローワーク経由で来た高城さんのような中高年世代。辞めたところで、なかなか次が見つからない。

「辞めないことを逆手にとって、どんどん給与を減らしていく。どうせ辞められないんだから、こっちの条件に文句を言わず、働け!とばかりに、足元を見て好き放題している会社でした」(高城さん)

 多くの中高年サラリーマンたちは、辞めても次がないから、生活のためにしがみつかざるを得ないという事情を抱えている。とくにローンのある人なら、なおさらだ。

「本来の“ブラック企業”といえば、夜遅くまで残業させて、会社を辞めさせてしまうことが多い。ところが、うちの会社は逆で、相場の半分くらいの給料で使い倒している。中には、仕方ないとあきらめて、働いている人もいます。そういうタイプの“辞めさせないブラック企業”でした」(高城さん)

 こうした“辞めさせない”企業の話も最近、増えつつある。辞めたいと言うと、会社が辞めるのを妨害し、いつまでも働かせるというのだ。

 高城さんの会社では、こうして辞められない、主に40歳代以上の足元を見て、給与を安価に引き下げたうえ、こき使い続ける。

 おそらく真面目で感性の豊かな人ほど、誰にも相談できないまま、一生懸命に働き続け、心身を摩耗させていくのだろう。