
「あなたからいただいたお金で買うわけにはいきませんからね」
タエ(北川景子)が「おトキがヘブンさんという西洋の方と結ばれたそうです」と三之丞と話している。
「え」と知らないふりをする三之丞。
「松江に西洋人がいるらしいとは聞いておりましたが」とごまかす。
タエはトキがヘブンの女中をして「毎月20円いただいている」とカマをかけるが、三之丞は「そうですか」「私より高給取りですね」ととぼけ続ける三之丞。
「そうね」と穏やかに返すタエ。これこそ、本音と建前の例であろう。
台所では何かがグツグツ煮えている音がする。お互い言えないもどかしい気持ちをグツグツと煮えている鍋の音で表現するのはひとつの手法である。これが日本のテレビの文化である。
場面が変わって、花田旅館。
「なしてだまっちょったの」とツル(池谷のぶえ)がトキに水臭いと軽く責める。司之介(岡部たかし)がうっかり漏らしたのだ。
いろいろあって、なかなか家族にも言えなかったというトキに、ツルと平太(生瀬勝久)とウメ(野内まる)がお祝い。3人の息が合わず、いつものように一悶着(ひともんちゃく)しているところに、タエが訪ねてきた。
ヘブンの家がどこか聞きに立ち寄ったのだ。ちょうどトキがいて……。
ヘブン宅の縁側で、タエはお祝いに自分の使っていた櫛(くし)を贈る。
「これは私が雨清水に嫁ぐ前から使っていたものです」
「あなたからいただいたお金で買うわけにはいきませんからね」
静かに、真相を知っていることを明かすタエ。おそらく、黙って、援助されていたことを知って、相当プライドが傷ついているであろう。でも、その感情は出さない。そこが武家の娘という感じである。
「申し訳ございません」と身を小さくするトキに「顔を上げて。悪いのは私です」と全部、自分で引き受ける、相変わらず凛としたタエ。
三之丞に「雨清水の人間なら、人に使われるのではなく、人を使う仕事に就きなさい」とむちゃを言ったことを反省する。まあ、その通りで、すべての要因はタエのへんな武家のプライドなのだけれど。
「そのせいで、あの子はあなたからお金をもらうようになってしまった」
「あなたがここで働くことになったのも私のせいなんじゃない?」とタエは申し訳なさそう。
結果的に、まわりまわっていいことになったのだから、結果オーライなのである。日本のことわざだと「塞翁が馬」(午年にちなんで馬のつくものを筆者なりに選びました)。







