『ばけばけ』第65回より 写真提供:NHK
今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、毎日レビューを続けて10年超えの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は、第65回(2025年12月26日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)
「おトキちゃんとやり直したい」
「おトキちゃんとやり直したい」
「やり直そう。東京で一緒に暮らそう」
波の音、ざわざわ。湖の反射光、キラキラ。
静かなピアノ曲が流れ……。
銀二郎(寛一郎)がトキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)を諦めきれず、繋ぎ止めようとしているとき、ヘブン(トミー・バストウ)の家に来たイライザ(シャーロット・ケイト・フォックス)は、部屋の随所に、トキとヘブンの交流の痕跡を見つけていた。
トキの描いたヘブンの執筆中の似顔絵、ヘブンが描いた三味線を弾くトキの全身図。鏡の前には「デカケルマエニ」と支度の仕方の図が描いてある。
すでにまるで夫婦といった感じで、出る幕なしと感じているイライザの憂いの表情と、繊細なピアノ曲がみごとに絡み合っている。
そこへヘブンが情緒のかけらもなく入ってきて、「オトキサン怪談スタイル」とロウソクをつけて怪談をイライザのために英語で語り始めようとする。たぶん、彼としては、お寺では日本語だったからイライザに英語で怪談を聞かせてあげようというおもてなしの気持ちなのであろう。が、自分の楽しみを優先し、イライザがうっすら涙していることに気づいていない。
怪談がはじまると、イライザは「もうここから離れるのよね」「どこかあたたかい土地へいかない?」「今度はわたしとふたりで」とヘブンの手を握り、そう持ちかけた。
が、あ、となって、その手を離す。ヘブンの手から何かを感じとったのであろう。それはトキがヘブンと最初に握手したとき何かを感じたように。言葉にしてしまうと無粋だが、イライザが触ったヘブンの手には彼女への愛は感じられなかったのだろう。







