次期FRB議長、誰が選ばれても「独立性」なしPhoto:Chip Somodevilla/gettyimages

 ドナルド・トランプ米大統領は連邦準備制度理事会(FRB)議長の候補を4人に絞り込んでおり、金融市場ではホワイトハウスの経済顧問ケビン・ハセット氏が就任するとの見方が大勢を占めている。

 一方で、誰がこの職に就くべきかという観点では、ハセット氏ではないとウォール街の多くの関係者は話す。

 なぜこのような食い違いが生じるのか。ハセット氏を最有力候補にしているのと同じ理由が、同氏を支持しない向きに懸念を抱かせている。つまり、トランプ氏にこれほど近い人物が、独立した中央銀行の運営ができるはずがないということだ。

 しかし、今回のFRB議長交代は、トランプ氏が従来の「独立性」という概念に当てはまらない議長を望んでいるという点で特異だ。同氏は自身の経済政策全体を支持する人物、つまり金利を大幅に引き下げる人物を求めている。

 トランプ氏は23日のソーシャルメディアへの投稿で、この姿勢を明確に示した。7-9月期の米国経済の力強い成長率を称賛した後、良いニュースが出るとFRBがインフレ回避のために利上げすることを見越して金融市場でしばしば売りが広がることを嘆いた。

 だが実際、23日に市場は下落しなかった。良いニュースを受けてFRBが金利を引き上げたこともない。過去2年間、経済成長は堅調で、株式市場は次々と最高値を更新したが、FRBは金利を引き下げてきた。これは、FRBがインフレよりも失業率を懸念しているためだ。

 トランプ氏にとって、それでは不十分だ。「市場が好調なら、新しいFRB議長には利下げしてほしい。何の理由もなく市場を破壊してほしくない。ここ数十年で見たことのないような市場を実現したい」と同氏は投稿で記した。「私に反対する者は決してFRB議長にはならない!」

 簡単に言えば、次のFRB議長は利下げを事前に約束した上でのみ、その職に就くことになる。これは独立性の一般的な定義に当てはまらない。最終候補者は誰もが利下げへの支持を表明している。そのリストに名を連ねるのは、ハセット氏、有力候補と目される元FRB理事のケビン・ウォーシュ氏、クリストファー・ウォラー現FRB理事、そして可能性は低いとされる米資産運用大手ブラックロック幹部のリック・リーダー氏だ。

 こうした点を踏まえると、ハセット氏に対する批判は誇張されている可能性があり、同氏の資質は過小評価されているかもしれない。同氏は博士号を取得しており、FRBスタッフとしての経験や主流派シンクタンクでの勤務経験、権威ある学術誌への論文掲載など、経済学者としての経歴は確かなものだ。奇妙な予測をしたこともあるが、ほとんどの場合はエコノミストらが理解できる言葉で自身の考えを伝えている。