税務署が厳しくチェックする「亡くなる直前の贈与」、届出しないと相続税が100万円増える?
大切な人を亡くした後、残された家族には、膨大な量の手続が待っています。しかも「いつかやろう」と放置すると、過料(行政罰)が生じるケースもあり、要注意です。本連載の著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。相続の相談実績は5000人を超え、現場を知り尽くしたプロフェッショナルです。このたび、最新の法改正に合わせた『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』が刊行されます。本書から一部を抜粋し、ご紹介します。
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なぜ税務署は「亡くなる直前の贈与」を厳しくチェックするのか?
本日は「生前贈与と税務署」についてお話しします。年末年始、相続について家族で話し合う際、ぜひ参考にしてください。
故人から亡くなる直前に生前贈与を受けていたという方はいませんか。実はその贈与、今から相続時精算課税制度を「選択するか、しないか」で、相続税の額が大きく変わる可能性があります。選択すれば、贈与された110万円は完全非課税として扱うことができますが、選択しなければ、その110万円は「死亡前7年以内の贈与」として相続税の対象に加算されてしまいます。相続時精算課税制度の概要と、選択する場合の具体的な手続・注意点をわかりやすく解説します。
そもそも、相続時精算課税制度とは?
贈与税には、大きく分けて「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」の2方式があります。有名なのは暦年課税制度のほうで、年間110万円までは非課税、それを超えた分に対して贈与税がかかるというものです。一方、相続時精算課税制度とは次のようなしくみです。
・贈与時に2500万円まで非課税(超えると一律20%の贈与税)
・ただし、その贈与財産は、贈与者が亡くなったときに「相続財産に加算される」ことで、相続税の対象になる
つまり、贈与時には非課税でも、相続時に“精算”して課税されるため、「相続時精算課税制度」という名前がついています。
2024年からは、110万円までなら“完全非課税”に!
2024年1月1日からの税制改正により、相続時精算課税制度を選択した方は、年間110万円までの贈与について、①相続時に加算されない、②贈与税の申告も不要、という“完全非課税”の扱いになりました。この改正により、相続時精算課税制度はこれまで以上に使いやすくなったと言えるでしょう。
相続時精算課税制度を適用するには?
この制度を使うためには、「相続時精算課税選択届出書(以下、届出書)」を税務署に提出する必要があります。例えば、X1年1月に故人から110万円の贈与を受け、同年10月に故人が亡くなったとします。相続が発生したあとであっても、X2年3月15日までに届出書を提出すれば、相続時精算課税制度の適用が可能です。この場合、当該110万円は“死亡前7年以内の贈与”とはみなされず、“完全非課税”として扱うことができます。
届出書は税務署の窓口のほか、国税庁のホームページからもダウンロード可能です。また、提出先となる税務署は、通常は「贈与を受けた人の住所地を管轄する税務署」ですが、贈与を受けた年が相続開始年である場合には、「故人の住所地を管轄する税務署」へ提出します。
届出書の提出期限に要注意!
亡くなった年に行われていた贈与に、相続時精算課税制度を選択する場合の届出書の提出期限は、①贈与税の申告期限(贈与を受けた年の翌年3月15日)と、②相続税の申告期限(死亡日から10か月以内)の、どちらか早い日までです。どちらが早い日になるかは「亡くなった日」によって異なります。
【具体例①】相続税の申告期限のほうが早いケース
贈与日:X1年1月20日
死亡日:X1年2月1日
→提出期限:X1年12月1日(=死亡から10か月)
【具体例②】贈与税の申告期限のほうが早いケース
贈与日:X1年1月20日
死亡日:X1年11月1日
→提出期限:X2年3月15日(=贈与を受けた年の翌年3月15日)
必ず期限内に書類提出を! 忘れると、相続税が100万円増える?
このように、亡くなった日によって届出書の期限は変わります。期限を過ぎてしまうと制度の適用ができなくなってしまうため、カレンダーをしっかり確認して、必ず期限内に届出を行いましょう。贈与を受けていた人が複数いる場合には、それぞれが届出書を提出するかどうかで、相続税が数十万円、場合によっては100万円以上変わることもあるため、慎重な判断が必要です。
(本原稿は『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』の一部抜粋・加筆を行ったものです)








