チームのメンバーや部下とのコミュニケーションを円滑にするにはどうしたらいいのか。2万人をみてきたコンサルタント・勅使川原真衣氏は、その方策を著書『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』で示す。発売前から話題沸騰、坂井風太氏も「革新性がある」と絶賛する同書から、内容を抜粋・再構成し特別公開する。

組織の違和感Photo: Adobe Stock

とにかくみんな疲れている

 変革の旗振りをしている人、
 結果を追い求める人、
「静かな退職」を普通に実践してますけど? という人……

 今や、組織への向き合い方も多種多様です。

 しかし、どんな状況・モードにある人にも共通している点があります。それは、

 仕事ってこんなに疲れる?

 という素朴すぎる疑念を抱いていることです。

 それもそのはず、書店へ行けば、さまざまなビジネス書や自己啓発本が平積みされています。

 みんな、変革や戦略が必要という前に、そもそも「疲れている」のではないか?

 それはそうです。経営指南は絶えずされていますが、昨今は組織づくりについても、ああでもない、こうでもない、と盛んに言われますよね。

 心理的安全性をなんとかしろ
 ストレスチェック結果に沿った施策はどうなっている?
 女性活躍の指標の達成はどうか?
 中期経営計画があと2年だが目標まで……
 ChatGPTをマスターしろ
 とにかく1on1をせよ

 ――変えろ、変われ。今のままではダメだ。

 世のコンサルだの(私もか!)、自称「できる/頭のいい」人代表である著名な経営者などは、口を開けばそう言います。

 けれど、一体何をどう変えるべきなのか?

 ただでさえ忙しいし、あれもこれも現状を違う・ダメなのだと否定されて、さらなる努力だ、「パワー!」と急き立てられても正直しんどい。

 それだけではありません。事態はますます複雑で、昨今では「あなたはあなたのままでいい」「頑張らなくていい」「弱くていい」そんな言説まで流布してきているのですから。

 この相容れない、「二大お仕事言説」--変えろ・変われ言説とゆっくり休もう言説と--が、私たちの頼みの綱になる、というより、両端から手綱を引っ張られた状態で、これまた疲労を増幅させていないでしょうか。

 いじわるな言い方ですが、「変わらなくていい。あなたは悪くない」と言ってもらってホッと安心していれば職場が良くなる……のなら、今こんなに疲れていない、はずです。

話し合いで決まったことが守られないのはなぜ?

 では、一念発起して組織を良くしようと話し合い、みなが納得したはずの新しいルールを定めたとします。

 最初のうちは、みんなそのルールに従おうとするでしょう。でも、1週間経ち、2週間経ち、1カ月経つと……また元どおり。

「別にこの制度意味ないんだよな」
「上は下のことをわかってない」

 なんて声も聞こえてくるかもしれません。

 なぜそんな状況が起きるのか。

 それは、お互いの目線が合っていないからです。

「とにかく何かを変えろ」と言われてやってみた、下から意見が出ないから仕方なく自分で考えた案を実行した、とにかく激務で時間がない……。もちろん、上司にも事情があります。

 しかし、問題点がわからないままそれっぽい解決策を話し合っても、真に良い制度はつくれません。

 上司が現場を見ず、会社の言いなりでルールを設定したと思われれば、部下の心は離れていくばかり。

 そんな瀕死状態の中、まずやるべきことは「変える」ことではありません。「見る」ことです。

「観察」の3ステップ

 職場の違和感を解消し、チームの力を最大限に引き出すための土台となる「観察」。それは、能動的で知的な次の3ステップから成り立ちます。

(観察の3ステップ)

ステップ① 違和感に気づく
ステップ② 複数の解釈を当ててみる
ステップ③ 対話の糸口になる仮説を立てる

「あれ?」と思ったことを自分の解釈のまま表現するのではなく、「もしかしたらこうかもしれない」という解釈があったうえで、相手に表現したときの反応を想像していく。

 このとき、相手と実際に対話が進みそうな仮説を立てるのがおすすめ。自分だけの「当たり前」で考えないのがコツです。

 これをやっていくと、少しずつ、それまでの自分の考えから解き放たれ、決めつけずに相手のことを見ることができるようになります。

 繰り返しますが、これはスキル。つまり、トレーニングによって少しずつ上達できます。