「どうしてすぐにやらないの!!!」
部下の仕事が遅い時。子どもが勉強しない時……。つい声を荒らげて「なんで?」「どうして?」と問い詰めてしまう人もいるだろう。しかし、「なぜ」は良くない質問なのだ。
では「問いのプロフェッショナル」の2人は何と声をかけるのか? ベストセラー『「なぜ」と聞かない質問術』の著者・中田豊一さんと『冒険する組織のつくりかた』著者である安斎勇樹さんが、それぞれの知見から「職場のコミュニケーションの悩み」を解決へ導く。(構成協力/高関進・構成/ダイヤモンド社・榛村光哲)

頭の悪い人は「なんでやらないの?」と聞く。頭のいい人は代わりに何と聞く?Photo: Adobe Stock

「やれ」と言わずにじっと待つことも必要

「中3の息子が受験勉強をあとまわしにしています。『どうしてすぐやらないの!』と叱ったら、ムスッとしていました。親としてどうコミュニケーションをとればいいでしょうか…?」(40代女性)

中田豊一(以下、中田) 身も蓋もないことを言うと、中3だともう遅いと思いますね。「馬を水辺に連れていくことはできるが、水を飲ませることはできない」というイギリスのことわざがあるように、子どもを塾に通わせることはできても、そこでちゃんと勉強するかどうかは本人しだいです。

安斎勇樹(以下、安斎) そうですね。ぼくも以前、中学生などが参加するワークショップを開催していた時期があるんですが、大人が子どものモチベーションをコントロールするのは不可能だと思います。自分から燃えるのを待つしかない。

中田 ただ、どちらにしても大事なのは、「どうして◯◯をやらないの?」「なんで◯◯したの?」といった「なぜ質問」を子どもに浴びせかけないことです。おそらくこの相談者さんは、この手の質問をしょっちゅうしてしまっているのではないでしょうか。

いつも同じ問いだから、子どもは「またいつものパターンか」とすぐ耳を閉ざしてしまう。ですから、まず第一歩は、「なぜ?」というはたらきかけをやめることです。

頭の悪い人は「なんでやらないの?」と聞く。頭のいい人は代わりに何と聞く?『「なぜ」と聞かない質問術』(中田豊一・著)

面白いことに、親がこうしたはたらきかけをやめた場合、子どもは親の「自己抑制」にちゃんと気づくんです。これには無数の実例があります。「お母さんは本当は私に『どうして勉強しないの!?』って言いたいはずなのに、言わないでおいてくれている。ちゃんと私のことを考えてくれている」って。そこが伝われば、必ず向こうから一歩近づいてくれます。

きっかけがあれば自分から動き始める

安斎 ぼくも、親のはたらきかけではなく、自分から勉強をやる気になったパターンでした。

中学受験をしたあと、中3の1学期くらいまでまったく勉強しなかったので、学年内でも下から数えたほうが早いくらいの成績だったんですね。親に感謝しているのは、そのときも含めて、一度たりとも「勉強しろ」とか「なんで勉強しないの」と言われなかったことですね。そうした干渉をせず、放っておいてくれたんです。

ぼくのひどい成績表を見た母は、「勉強してないんだから、そりゃこうなるでしょ。成績が悪いのは当たり前で、へこむことじゃない」と笑ったんです。そのときぼくの中では「勉強していないなら当然、成績が悪くなる→勉強をすれば当然、成績がよくなる」という感覚が醸成されていったんですね。

で、中3の夏ぐらいに「よし、勉強しようかな」と素直にスイッチを入れることができたんです。

中田 そのスイッチが入ったきっかけは覚えていらっしゃいますか?

頭の悪い人は「なんでやらないの?」と聞く。頭のいい人は代わりに何と聞く?『冒険する組織のつくりかた』(安斎勇樹・著)

安斎 きっかけはバスケ部の先生です。中学時代はけっこう部活のバスケに力を入れていたんですが、中高一貫校に通っていたので、中3の夏から高校のほうのバスケ部に入ることができたんです。

ただ、そこの監督が「勉強ができないやつは、バスケもできない!」という「文武両道」ならぬ「文武調和」のポリシーを持っていました。むちゃくちゃ厳しい方だったんですが、ぼくはなんだかそれがうれしくて、「高校でこの先生の超厳しい指導でバスケをやったら、もっとがんばれるチャンスかも!」と思って、勉強もがんばりはじめたんです。

そういう意味では、ぼくはすごく恵まれていたのかもしれないと思いますね。

(本記事は本稿は、『「なぜ」と聞かない質問術』の著者・中田豊一さんと、『冒険する組織のつくりかた』の著者・安斎勇樹さんによる特別な対談記事です)