チームのメンバーや部下とのコミュニケーションを円滑にするにはどうしたらいいのか。2万人をみてきたコンサルタント・勅使川原真衣氏は、その方策を著書『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』で示す。発売前から話題沸騰、坂井風太氏も「革新性がある」と絶賛する同書から、内容を抜粋・再構成し特別公開する。
「自分でやったほうが早い病」への処方せん
職場のリーダーによくある問題として、「他のメンバーに仕事を振れない」ということがあります。
役割分担したにもかかわらず、そのとおり実行できないということも。
または、自分のチームにはこれが足りないと自覚していても、「それでも自分で何とかする」と、無理をすることで不足を個人的に抱え込むケースもあります。
そんなとき私は、
「ぶっちゃけ、できそうですか?」
「できるなら、今までもできたはずでは?」
と尋ねます。
そこで「難しいとは思いますが、他に頼れる人がいないので……」というような答えが返ってきたら、次のようにお伝えします。
「メンバーの持ち味や武器を、どのくらいご存じですか? 周りは周りで、あなたを助けたいのに助け方がわからないという人もいらっしゃるんじゃないですか?」
失敗を防ぐ「知的謙虚さ」とは
「自分でやったほうが早い」、「自分の分身が欲しい」。そう嘆いて仕事を任せないリーダーは、現状と目標のギャップを永遠に埋めることができません。
チームを良くしたいと本気で思うなら、「誰に何をどのくらい振ることができそうか」をよく考えてみてください。
チームは、例えるならば1台の車です。リーダーだけが別枠なのではなく、リーダーもひとつの機能として、チームを前に進めるために、走る車を構成する一員。
逆に言えば、あなたのチームがうまくいっていない場合、それはあなたの資質のせいとは限りません。
機能に応じた役割分担がうまく機能していないことが原因というケースも多々あります。
科学ジャーナリストのデビッド・ロブソンは、著書『知性の罠』(日経BP、日本経済新聞出版)で、世界中の偉人たちが陥った過ちについて、
「いずれのケースもすばらしい知能が論理的で合理的な思考ではなく、理屈づけや自己正当化に使われた」
と伝えています。それを教訓に、
「周囲の人に対する偏った見方を正当化したり、職場で見当違いのプロジェクトを推し進めたり」
するのを防ぐのが、
「知的謙虚さ」
なのだと。
私はこの「知的謙虚さ」というのは、言い換えれば、自分と異なる他者の持ち味や機能を認め共存できることでもあると考えています。
チームを機能させるために
他方で、私が大きな問題だと感じているのは、リーダーがひとりで高度なフィードバック力、コーチング力、傾聴力、質問力などのすべてを身につけるべきとする風潮があることです。
ですが実際には、そんな人は存在しません。
プレイヤーとして優秀だったとしても、それはマネジメント業務がないからできていたことかもしれず、リーダーになってもすべてを完璧にこなそうと思えば無理も出るでしょう。
チームをうまくいかせることが目標であるならば、一度、周りを見渡してみてもよいのではないでしょうか。
もしかしたらすぐ近くに、凸凹で助け合える人がいるかもしれません。
すべての力をひとりの人間が備えるのは無理だし、その必要もない。ただし、出発点となる「観察」というスキルだけは、全員が身につけるべきです。
「この人がこのチームの中で発揮しやすい『機能』は何だろう?」
「あの人とこの人の凸凹とをどう組み合わせたらいいチームになるだろう?」
こうした観察を怠らなければ、「自分ひとりの力で何とかせねば」というひとり相撲にはまらずに済みます。

「好き嫌い」や「やる気」、
「あうんの呼吸」に頼らず
組織を機能させるための具体策!
対話より先に、やるべきことがある。
「大丈夫です」のひとことでモヤッとしたとき、
待ちの姿勢ばかりの部下に自走してもらうにはどうしたらいいのか、
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えるための効果的な伝え方は?……
ビジネスの現場に尽きないコミュニケーションの悩みを、「マネジメント」のスキルとして、「3段階」に分けて打ち手を授けるのが本書です。
まずは土台となる「観察」のスキルを紹介。ここでは、違和感に着目するというユニークな手法をとります。
そして、「自分を知る」「相手を知る」「組み合わせる」の3段階で、関係性から組織の最適解を導き出します。
自分と相手の「持ち味」を知り、
組織をつなぎ直すための一手を
この3段階を経て、違和感を乗り越えるための伝え方や振る舞い方を具体例とともに紹介します。
スキルといっても、難しいものではありません。「あれ、今なんか変だったな」という気づきを、手がかりにつかむこと。
さらに本書では、「持ち味」を知るためのいくつかの診断も掲載。すぐにチームに実装できるような作りにしています。
事前に特別な準備や学習はまったく不要。やるべきことが明確になり、現場のもやもやがクリアになります。
いつでも「今ここ」での気づきから組織を改善できる。行き詰まった状態を打開する新鮮な方策が詰まった、忙しいリーダーの支えになる一冊です。

本書の内容
はじめに
ギリギリな組織の頼みの綱は
人それぞれが「正しさ」を生きている
「持ち味」の組み合わせと「解釈」のクセ
第1章 違和感とは何か? ―― 「決めつけ」が横行する現場で
観察の達人!? コナンくん
仕事に本音はいらない
「なんか変な感じ……」の正体
人はみな「違う色のメガネ」をかけている
「職場のすれ違い」は決めつけから生まれる
とにかくみんな疲れている
すべてのコミュニケーションの基本となる「観察」の3ステップ
第2章 「自分を知る」 ―― 違和感に気づくと「自分」がわかる
自分の本音がわからない
変えられない性質は確かにある
手がかりは「どうしてもとりつくろえない瞬間」
「わかってほしかった」は「解釈のクセ」が生み出している
「自分が知らない自分」はスマホが教えてくれる
第3章 次に、「相手を知る」 ―― 人間関係の違和感から「相性」を知る
「伝える」の前に「見る」がある
「言わなくてもわかるでしょ」はマネジメントの怠慢
相手の何を「見る」のか? ―― ソーシャルスタイルの4類型
「他者の合理性」を知るヒント
「人それぞれ」では話が進まない
第4章 そのうえで、「組み合わせる」 ―― 違和感を役立て最高の組織をつくる
「今いるメンバー」で最高のチームをつくる
「好き嫌い」より「相性」を考える
それは「評価」ではなく「評判」です
「自分でやったほうが早い病」への処方せん
「似た者同士」がうまくいくとは限らない
職場は「ドレッシング状態」にならなくていい
個人と組織のサンドイッチ作戦
第5章 違和感を乗り越えるための話し方・振る舞い方
役割の実行を後押しする「面談」「相談」「雑談」「対話」
「大丈夫です」の複雑さ
「よかれと思って」が残念なワケ
待ちの姿勢ばかりの部下に「自走してほしい」と伝えたい
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えたい
コミュ力が高い人の「真の使命」は、相手に合った手段を選ぶこと
危うい場面で役に立つ「否定しない技術」
会議時間を短縮すれば「生産性」が高まるのか?
「困っている人」は「決めつけていない人」
第6章 「いてくれてありがとね」から始める組織改革
「いい人材がいない」と嘆く人は組織の価値を見落としている
「重すぎない信頼関係」のススメ
「健全に疑う」のススメ
100点を取ってきた子どもに「偉いね」と言ってはいけない理由
100%わかり合うことは無理、それでも「訂正」し合うことはできる
「自分のまま働く」ために
解説 ―― 坂井風太