チームのメンバーや部下とのコミュニケーションを円滑にするにはどうしたらいいのか。2万人をみてきたコンサルタント・勅使川原真衣氏は、その方策を著書『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』で示す。発売前から話題沸騰、坂井風太氏も「革新性がある」と絶賛する同書から、内容を抜粋・再構成し特別公開する。
企業研修でクライアント先にお邪魔すると、ものすごく静かで、何も反応がないときがあります。
休憩時間でも、みんな静か。
グループワークをしても、目も合わせず下を向いていたり、グループ内で「○○さん」「ちょっとこうしよう」という声かけがまったくないことも。
休み時間にそれとなく「ここまでどうですか?」と話しかけると、「どうもやりにくくて……」と小声で返ってきたりします。
「この研修は、みなさんにとって実際の業務ではありません。だからのびのびとやってくださっていいし、私がみなさんの上司に個々の挙動を報告することはないので、人事評価に結びつくこともないですよ」
そう伝えても、何も言わない人ばかり。
「静かなチーム」の落とし穴
会社の中で「自分が思ったことを言ってもいい」という安心感がなければ、たとえ評価に結びつかない研修であっても、自分が間違ったことを言ってしまうのではないかと思うものです。
部署を横断した研修の場でも、自分が所属する部署(組織)の文脈を引き継いでしまっているのでしょう。
「口は災いの元」とばかりにだんまりを決め込む組織……いろいろと厳しいですよね。
多くの人が、組織の中で仕事をできるようにならなければと思えば思うほど、「正しい答え」や「結論のあること」しか言ってはいけないという病いにかかっていきます。
ですが、会話を早く終わらせ、タイパよく仕事を進めたとしても、それで職場が違和感だらけになってしまったら本末転倒ではないでしょうか。
近年、「静かな退職」という言葉も出てきて、「何も言わない」ということは「不満がない」ということと同義ではないというのは、みなさん重々承知のことと思います。
どんな立場の人にも、必ず心の中で考えていることがあります。でもそれを「言っても意味がない」と決めつけて、あきらめてしまっている。もとい、あきらめざるを得ない状況に追い込まれている。
それってすごくもったいないことです。なぜなら、せっかく仲間がいるのにひとりで働いていることと同じになってしまうから。
素朴な「気づき」を封印する職場
そう考えてみると、私たちはあまりにも職場で直感や気づきを共有する言葉を封印しすぎではないでしょうか。
システマチックにとにかくタスクを片づけなければいけないような状況下では別ですが、普段のコミュニケーションの場ではもっと素直に、5歳児のコミュニケーションくらいの意識でいいのではないかと思います。
なんなら、「すごい」ではなくて、「おもしろい」が多発するくらいがいい。
「わかる! うまく言えないけど」
「◯◯さん、ちょっと今のはさすがに傷ついたんですが!」
「それはさすがにムリです。どうしましょう?」
こんな言葉が飛び交っている職場は、いい職場だなと思います。
なぜなら、違和感が積もり積もって、発酵していかないから。
言われた瞬間にぐさっとくる感覚、ハッとする感覚をちゃんとつかむ。そして、それを「とりあえずテーブルに置く」ことです。
それができずに「きっとあの人は私を嫌っているんだ」と憶測を入れたり、「あの人はどうせ◯◯だから」と理由らしきものをつけたところで、違和感は積もるばかり。
大切なのは決めつけないことです。

「好き嫌い」や「やる気」、
「あうんの呼吸」に頼らず
組織を機能させるための具体策!
対話より先に、やるべきことがある。
「大丈夫です」のひとことでモヤッとしたとき、
待ちの姿勢ばかりの部下に自走してもらうにはどうしたらいいのか、
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えるための効果的な伝え方は?……
ビジネスの現場に尽きないコミュニケーションの悩みを、「マネジメント」のスキルとして、「3段階」に分けて打ち手を授けるのが本書です。
まずは土台となる「観察」のスキルを紹介。ここでは、違和感に着目するというユニークな手法をとります。
そして、「自分を知る」「相手を知る」「組み合わせる」の3段階で、関係性から組織の最適解を導き出します。
自分と相手の「持ち味」を知り、
組織をつなぎ直すための一手を
この3段階を経て、違和感を乗り越えるための伝え方や振る舞い方を具体例とともに紹介します。
スキルといっても、難しいものではありません。「あれ、今なんか変だったな」という気づきを、手がかりにつかむこと。
さらに本書では、「持ち味」を知るためのいくつかの診断も掲載。すぐにチームに実装できるような作りにしています。
事前に特別な準備や学習はまったく不要。やるべきことが明確になり、現場のもやもやがクリアになります。
いつでも「今ここ」での気づきから組織を改善できる。行き詰まった状態を打開する新鮮な方策が詰まった、忙しいリーダーの支えになる一冊です。

本書の内容
はじめに
ギリギリな組織の頼みの綱は
人それぞれが「正しさ」を生きている
「持ち味」の組み合わせと「解釈」のクセ
第1章 違和感とは何か? ―― 「決めつけ」が横行する現場で
観察の達人!? コナンくん
仕事に本音はいらない
「なんか変な感じ……」の正体
人はみな「違う色のメガネ」をかけている
「職場のすれ違い」は決めつけから生まれる
とにかくみんな疲れている
すべてのコミュニケーションの基本となる「観察」の3ステップ
第2章 「自分を知る」 ―― 違和感に気づくと「自分」がわかる
自分の本音がわからない
変えられない性質は確かにある
手がかりは「どうしてもとりつくろえない瞬間」
「わかってほしかった」は「解釈のクセ」が生み出している
「自分が知らない自分」はスマホが教えてくれる
第3章 次に、「相手を知る」 ―― 人間関係の違和感から「相性」を知る
「伝える」の前に「見る」がある
「言わなくてもわかるでしょ」はマネジメントの怠慢
相手の何を「見る」のか? ―― ソーシャルスタイルの4類型
「他者の合理性」を知るヒント
「人それぞれ」では話が進まない
第4章 そのうえで、「組み合わせる」 ―― 違和感を役立て最高の組織をつくる
「今いるメンバー」で最高のチームをつくる
「好き嫌い」より「相性」を考える
それは「評価」ではなく「評判」です
「自分でやったほうが早い病」への処方せん
「似た者同士」がうまくいくとは限らない
職場は「ドレッシング状態」にならなくていい
個人と組織のサンドイッチ作戦
第5章 違和感を乗り越えるための話し方・振る舞い方
役割の実行を後押しする「面談」「相談」「雑談」「対話」
「大丈夫です」の複雑さ
「よかれと思って」が残念なワケ
待ちの姿勢ばかりの部下に「自走してほしい」と伝えたい
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えたい
コミュ力が高い人の「真の使命」は、相手に合った手段を選ぶこと
危うい場面で役に立つ「否定しない技術」
会議時間を短縮すれば「生産性」が高まるのか?
「困っている人」は「決めつけていない人」
第6章 「いてくれてありがとね」から始める組織改革
「いい人材がいない」と嘆く人は組織の価値を見落としている
「重すぎない信頼関係」のススメ
「健全に疑う」のススメ
100点を取ってきた子どもに「偉いね」と言ってはいけない理由
100%わかり合うことは無理、それでも「訂正」し合うことはできる
「自分のまま働く」ために
解説 ―― 坂井風太