「謝罪・感謝」がなくて朝ドラ批判されがちだったけど…『ばけばけ』の麗しいやり取りにキュン〈ばけばけ第75回〉『ばけばけ』第75回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、毎日レビューを続けて10年超えの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は、第75回(2026年1月16日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)

トキ、はじめての西洋料理

「オーマイガー」とヘブン(トミー・バストウ)がバレちゃったという顔でそこにいた。

 トキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)が乗り込んだ部屋は、窓ガラスがピンクと黄色の色ガラスになっていて、なんだかちょっと華美な部屋だった。

 そこにちょこんと座っているヘブンに「何ですか。これは なんですか」と聞くと、山橋(柄本時生)は「これは西洋料理というものでして」と聞いていないことを答える。お約束。当然、無視してトキはヘブンに迫る。

「先生。錦織さんと中学校で熱い議論を交わしちょるんだなかったんですか?」

 この部屋は、山橋薬舗の奥で経営している「山橋西洋料理店」だった。

 こっそり西洋料理を食べているヘブンに「そげに嫌ですか? そげに私や母の料理が嫌ですか?」とトキの声には抗議の色がこもって聞こえる。

「違います」
「違わんがね」
「違う」

 押し問答の末、主題歌へ。ほんと「毎日難儀なことばかり♪」。

 主題歌明け。山橋がひとまず「おかけください」とトキに椅子をすすめる。

 トキ、はじめての椅子とテーブル?

 座ったトキの前に「本日のオードブルはサバのマリネードでございます」とおいしそうな鮮魚料理の皿が置かれる。

「まずはお食事をなさっておなかと心を落ち着かせてからお話しをするのがよろしいかと」と山橋。

 はじめてのナフキン、はじめてのナイフとフォーク。はじめての西洋料理。

「おいしい?」
「いいえ」

 ぎゃふん。うなだれるヘブン。

 通常だと、プンプン怒っていたけれど、料理を食べたら、あらおいしい(ハート)となりがちだが、トキは西洋料理になんかになびかない。なぜなら、彼女は西洋化されない人だから。明治維新以降、西洋化されてきた日本人たちのなかで、頑(かたく)なに廃れそうな怪談を愛してきたのだから。

 ヘブンだって西洋文化より日本文化のはずなのになぜ……。