「幸福の条件」とは何だろう。お金や地位、名誉を挙げる人もいれば、「愛する人と過ごす日々」と語る人もいるはずだ。19世紀ドイツの哲学者、ショーペンハウアーの考えについてまとめた『求めない練習 絶望の哲学者ショーペンハウアーの幸福論』によると、彼は幸福の第一条件として「健康」を挙げたという。言われてみれば当たり前のことだが、人はつい収入を優先し、健康を後回しにしてしまう。結果的に健康を失った経験がある人も少なくないだろう。本記事では、ショーペンハウアーが幸福の条件として「健康」を挙げた理由について解説する。(文/神代裕子、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)
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健康を犠牲にしてまでお金を求めてはいけない
筆者は会社を辞め、フリーランスとして独立してから3年ほど、馬車馬のように働いていた時期がある。
フリーランスという不安定な立場が不安で、来る仕事を片っ端から受けていたというのも理由の一つだが、仕事をした分収入になるフリーランスならではの環境を最大限に活かしたいと思ったからだ。
結果、体調を崩した。とにかく仕事を詰め込んだので、収入は大きく伸びたが体がつらかった。それでも締め切りは次々にやってくるので、生まれて初めて、にんにく注射まで打った。
そうしてある日、「こんなに頑張って稼いでも、使う暇もない。体調も悪い。私は稼いで一体何がしたいんだろう」と突然思ったのだ。
「健康が何より大事である」と身をもって理解した瞬間だった。
その後は仕事をセーブするようになった。当然、収入はその馬車馬時代よりも下がったが、今は体力的にも気持ち的にも余裕がある生活を送れている。
収入が高かった当時より、今の方が幸せだと心から思える。
幸福の第一条件は「健康」
19世紀ドイツの哲学者・ショーペンハウアーも、幸福の第一条件として健康を挙げている。
彼は、ある古書を読んでいて「よく笑う者は幸福であり、よく泣く者は不幸である」という一節を見つけたそうだ。
健康な人は、楽天的な性質を持つ人が多い。笑えるということは、ストレスをあまり受けない生活をしていると言えるからだ。
また、よく笑うのは生まれ持った気質の一つでもある。明るい心は、人を幸福にしてくれる。
ショーペンハウアーは、次のように語っている。
そして、その明るい心を支えているのは、お金や名誉ではなく、健康なのである。
もちろん、お金があった方が明るくポジティブでいられる。しかし、どんなにお金があっても、体調が悪ければイライラしたり不安になったりする。健康は必須条件なのだ。
幸福度は「明るく笑えるか」で決まる
著者のカン・ヨンス氏は「幸福の度合いは、若さや外見、富、名誉などではなく、明朗さによってわかるものだ」と語る。
つまり、幸福度は明るく笑えるかどうかで決まるのである。そして、その大きな要因の一つが健康であるというわけだ。
そして、幸福にとって、健康の次に重要な要素は「心の安らぎ」だという。
確かに心の安らぎがなければ不安になり、笑うことも難しいだろう。
心の安らぎが手に入る4つの方法
ショーペンハウアーは、心の安らぎを手に入れるための方法として、次の四つを挙げている。
①不必要な人間関係を整理する
確実な方法は、人との不必要な交際を減らすことである。会話する価値のない人と関われば、心が傷つくかもしれないからだ。重要なのは、他人と自分を比べず、嫉妬心を捨て、自尊心を守ること。ショーペンハウアーは「退屈にならない程度になるべく人間関係をシンプルにし、生活パターンを単純化することで幸福になれる」と勧めている。
②嫉妬を警戒する
嫉妬は人間の自然な感情だが、自分を他人と比べるのはやめて、人生を楽しむのがいい。自分より恵まれている人より、恵まれていない人、自分よりももっと不幸な人に目を向けるのも、悪くない方法だ。
③過大な希望を持たない
私たちはときどき、「生まれなかったらよかったのに」と後悔する。しかし、それでも私たちは、生きてこの世に存在していることに感謝すべきだ。ショーペンハウアーは「人生はごく小さい点に過ぎない」と言った。もし、夢が破れ、失敗しても、生まれてこなかったよりはましであると考えよう。
④この世には嘘が多いことを知る
この世には、表向きだけが輝いて成功しているように見えるものが多い。しかし、そんな華麗な見た目に幸福はない。ショーペンハウアーは、「幸福な人を見分けるには、楽しさよりも悲しみに注目すべきだ」と述べている。
心がざわつくことから意識的に距離を取ろう
幸福になるために心の平穏を保つことが必要ならば、あまり感情が大きく上がったり下がったりしない環境に身を置くことが大事ということだろう。
そして、外的な刺激だけでなく、他人と比べることで生まれるねたみや嫉妬、期待や希望にも警戒する必要がある。
カン・ヨンス氏は「賢明な人は、何よりも苦痛のない状態、安定と余裕を手にしようと尽力する」と指摘する。
40代になると、社会的地位や収入、子どもの有無などで、差がつきやすい。
わざわざマウントをとってくる人もいる。
しかし、そういった「心がざわつくことからは距離を取る」と決めていれば、ずっと生きやすくなるはずだ。
体の健康と心の平穏。この2つを意識的に手に入れて、明るく穏やかな日々を過ごすことが確かな幸福につながっている。そのことをしっかりと覚えていたいものである。









