カイゼンと流通改革で低価格を実現、1000店舗を運営する「サイゼリヤ」。異常な原価率の高さが人気の「俺のイタリアン」。常識破りの2社の経営トップに対峙してもらった。

正垣泰彦・サイゼリヤ会長(左)と坂本孝・俺の株式会社社長(右)
Photo by Kazutoshi Sumitomo

坂本孝 外食業界に本気で参入して、2年でして。正垣会長は、もう四十数年。今日は子どもが横綱に会ったような気分です。

正垣泰彦 いえいえ、恥ずかしくて、どこか入りたいですね。

 自分は1つのこと以外はできないんだけど、坂本さんはどんどん挑戦していくじゃないですか。「ブックオフ」を創業、経営されて、次に「俺のイタリアン」。

 新しいビジネスを探し当てる勘っていうのかな、それがやっぱりすごい。どうやって磨いているんですか。

坂本 私は山梨県甲府市の生まれなんですが、おやじが、町工場を経営していまして。物心ついたときには、食卓で新事業の話などを聞かされていたわけです。いつもそういう環境にいまして。一度も会社に勤めたことがないんですよね。自分自身がやらなきゃいけないから、常に新しいビジネスのネタを探し歩いています。

 街に行列があると、すぐに並びますしね。ユニクロでも3時間待ちましたから。並んでいる人にいろいろ話も聞きます。どこかで閉店セールがあると聞けば、行きますし。

 飲食店を視察すると、「立ち飲み居酒屋」と「ミシュランの星付きレストラン」が繁盛していることに気づいたんです。じゃあ、その2つをくっつけてしまえば、勝ちパターンなのではないかと思い、「俺の」を始めました。

──「サイゼリヤ」はデフレ時代に成長、俺のイタリアンは脱デフレの先駆けというイメージがあります。価格や戦略を決めるときに、デフレやアベノミクスといった世相のようなものを意識しますか。

正垣 価格がどうのっていうよりも、値打ちが大事なんです。値打ちっていうのは価格に対して品質がよいということ。