「目が速い人は速読できる?」→科学的にムリでした。その意外な理由とは?
「読むのが速い人は、耳がすごかった!」
読書中、私たちは文字を脳内で“音”に変換し、その音で理解しています。ポイントは「音の理解速度」。ここを鍛えれば、読書は一気に変わります。本連載は、耳から脳を鍛え、速読力を高める「速聴トレーニング」をお伝えするものです。脳を鍛えることで、理解力、記憶力、集中力もアップします。そのノウハウをまとめた『耳を鍛えて4倍速読』より内容を抜粋し、ご紹介します。

「目が速い人は速読できる?」→科学的にムリでした。その意外な理由とは?Photo: Adobe Stock

「目が速い人は速読できる?」科学的にムリでした。その理由とは?

「目が速い人は速読ができる」

 スクールや速読本でよく目にする言葉で、とても魅力的ですよね。でも、残念ながらこれは大きな誤解です。

人間の視力の限界とは?

 これまで世界中で行われてきた視覚の研究を引用しながら、人間の視力の限界についてご説明します。研究では、人間が文字をクリアに認識できる範囲は驚くほど狭いことが判明しています。具体的にご説明しましょう。腕を伸ばして、親指を立ててください。その親指の横幅程度、科学的には「窩(か)」と呼ばれる、視野の中心からわずか1度の範囲です。

 つまり「見えてはいるけれど、読めてはいない部分」が周りにたくさんある、というのが本当のところなのです。私は多くの速読スクールに通い、たくさんの本を読みました。そこでよく聞いたのが「目は数行を同時に読める」という説明です。これは人間の目のしくみを完全に無視した説明です。

 実際にやってみましょう。この文章を読みながら、あなたの視線を一点に固定してみてください。

 その中心から2.5度離れただけで、文字を識別する力は半分以下に落ちます。さらに5度離れると、およそ70%も低下します。つまり「広い範囲を一度に読む」というより、「中心だけははっきり読めるが、周りはどんどんぼやけていく」というほうが、実際の見え方に近いのです。

「訓練すればできる?」→それは無理です

「でも訓練すれば、周辺視野で文字を読む力を伸ばせるんじゃないの?」と思うかもしれませんね。私も最初はそう思いました。

 けれどこれは、「筋トレをすれば背が伸びる」を信じるのに近い話です。人間の目は、中心部に文字のような細かい情報を処理できる錐体(すいたい)細胞が集中し、周辺部には動きや明るさの変化を感知するのに向いた桿体(かんたい)細胞が多い構造になっています。周辺視野は「気づく」には適していても、「読む」には向いていない。ここは生物学的な限界なので、訓練で別物にすることはできません。

 面白いエピソードがあります。世界速読チャンピオンのアン・ジョーンズは、ハリー・ポッターの最新刊を47分で読破したと主張しました。すごい記録ですよね。

 でも、読後の感想を聞くと「良い本だった」「子どもに人気があるのがわかる」といった、ごく表面的な内容しか答えられませんでした。

 これは彼女の能力の問題というより、人間の目がそもそも一度に認識できる文字の量に上限があるため、理解をともなう読書を極端に短時間で行うことが難しい、ということを逆に示しているのです。

(本原稿は『耳を鍛えて4倍速読』の一部抜粋・加筆を行ったものです)