速く読めたけど覚えてない…読書が台無しになる「絶対NG習慣」とは?
「読むのが速い人は、目ではなく、耳がすごい」
読書中、私たちは文字を脳内で“音”に変換し、その音で理解しています。ポイントは「音の理解速度」。ここを鍛えれば、読書は一気に変わります。本連載は、耳から脳を鍛え、速読力を高める「速聴トレーニング」をお伝えするものです。そのノウハウをまとめた『耳を鍛えて4倍速読』から内容を抜粋し、ご紹介します。
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読書が台無しになる「絶対NG習慣」とは?
私はある速読スクールで「頭の中を無音にしよう」と教わりました。確かに文字を追う速度は上がり、自分でも「速く読めている!」と思えた瞬間はあります。けれど、それが間違いだと気づくのもすぐでした。読み終えた瞬間から内容が霧散し、「この本で何を学んだっけ?」と、タイトルすら怪しくなる。つまり、理解できていなかったのです。
脳内で文字を「音」に変換している
フロリダ州立大学フロリダ読書研究センターの研究(※1)は、この理由を示しています。研究者のキム・ヨンスク(Young-Suk Kim)氏は、子どもたちがどのように音読から黙読へ移行するのかを、視線追跡技術を用いて調査しました。
その結果、頭の中で音に変換する「サブボーカリゼーション」(subvocalization)というプロセスが、読解の土台になっていることが示唆されました。最初は小さな指で一文字ずつ追いながら声に出して読み、その後、読解力が上がるにつれて頭の中で読むようになる。一見すると「音読をやめた」ように見えますが、実は違います。脳内で音に変換するプロセスを自動化しているだけなのです。
これは私の読書経験とも一致します。今も1日2冊のペースで読書をしていますが、理解しようとする瞬間には必ず「頭の中の声」が動き出します。特に難しい文章や、初めて目にする専門用語に出合ったとき、この現象は顕著です。
「脳内音声」を聴いてみよう!
少し実験してみましょう。この文章を読みながら、頭の中で声が聴こえていませんか? 自分の声、もしくは誰かの声で、今読んでいる内容を「話している」ような感じがするはずです。面白いでしょう。これは意識して「声を出そう」としているわけではないのに、勝手に脳内で起きている現象で、ほとんどの人がこの「内なる朗読者」と一緒に読書をしています。
fMRI(MRIの技術を応用して脳の活動を調べる方法)を用いた研究(※2、3)でも、読書時、通常の読者では視覚情報と音韻情報の処理に関わる脳内の広い領域が活性化する一方、読解に困難を抱える失読症の方では、これらの領域の活性化が相対的に少ないことが報告されています。つまり、頭の中で文字を音として再生する働きが弱いと、文章そのものが理解しづらくなるわけです。
「脳内音読」を止めてはいけない!
「でも、私は頭の中で音読してないよ?」と感じる人もいるでしょう。
けれど、これは慣れによる錯覚です。日常的にハンドルを握るドライバーが、どの角度でハンドルを切っているかいちいち意識しないのと同じ。頭の中の音声を上手に「無視」できるようになっただけで、プロセスとしては確実に存在しています。人間が完全に脳内音読を止められるのかについては、研究者の間でもいまだ決着がついていません。
脳内音読を止めることは、車のエンジンを止めて「これで燃費が良くなった!」と喜ぶようなものです。表面的には正しく見えても、本質的な部分で完全に間違っています。
そもそも、1秒間に5000文字が読めたとしても、理解も記憶も伴わないのであれば、それは読書とは呼べないのではないでしょうか。
※1 Florida State University.(2012). “How Do Children Learn to Read Silently?” ScienceDaily, February 14, 2012.
※2 Dehaene S.(2009). “Reading in the Brain: The Science and Evolution of a Human Invention.” New York, NY: Viking.
※3 Cohen L, Dehaene S.(2004). “Specialization within the ventral stream: The case for the visual word form area.” NeuroImage, 22(1), 466-476.
(本原稿は『耳を鍛えて4倍速読』の一部抜粋・加筆を行ったものです)







