「語彙が貧しい人は、考えも浅い」SNSが“思考力”を奪う仕組みとは?
「読むのが速い人は、耳がすごかった!」
読書中、私たちは文字を脳内で“音”に変換し、その音で理解しています。ポイントは「音の理解速度」。ここを鍛えれば、読書は一気に変わります。本連載は、耳から脳を鍛え、速読力を高める「速聴トレーニング」をお伝えするものです。脳を鍛えることで、理解力、記憶力、集中力もアップします。そのノウハウをまとめた『耳を鍛えて4倍速読』より内容を抜粋し、ご紹介します。
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「語彙が貧しい人は、考えも浅い」その理由とは?
「情報があふれる時代なのだから、私たちは昔より賢くなっているはずだ」。そんな言葉を耳にしたことはありませんか?
スマートフォンを開けば、SNSやニュースアプリ、動画配信サービスまで、指先1つで世界中の情報に触れられます。これだけ接触量が増えれば、知識も語彙も自然に増えると思うかもしれません。けれども、ここには見過ごしがちな落とし穴があります。情報の「量」と「質」は、同じ尺度では測れないのです。
SNSにあふれる「語彙」とは?
例えば「SNSの普及で文字に触れる機会が増えた」という主張があります。確かに、LINEでもXでもInstagramでも、画面は文字で満ちています。
しかし、私たちが日々目にしているのは、多くの場合、限られた語彙が高速に循環する光景にすぎません。「エモい」「ヤバい」「最高かよ」「ハンパない」―便利で即効性のある言い回しが、場面を横断して使い回されています。結果として、文字との接触は増えても、語彙の幅はむしろ痩せます。
仕事でも、その傾向をしばしば実感します。若手社員の企画書やメールには「すごい」「いい感じ」といった感嘆が並び、さらに「素晴らしい」「優れた」「卓越した」といった言葉と取り替えるだけで説得力を出そうとします。
語彙が貧しいと、なぜ考えが浅くなるのか?
語彙が貧しいと、思考の輪郭も曖昧になります。細部を言い分ける言葉を持たないと、対象の差異が見えにくくなり、議論は単純化へと傾きます。これは単なる言葉づかいの問題ではなく、判断の精度に直結する問題です。
では、どうすればいい?
語彙の厚みを育てるには、文脈の多様さに身を浸す経験が不可欠です。100冊の本を読むことと、SNSのタイムラインを1年分流し見ることは、仮に投入時間が同程度でも、得られる効果がまったく異なります。
前者では、作者ごとの文体や視点、比喩やリズムに触れることで、意味の陰影を読み分ける感覚が磨かれます。後者では、即時性ゆえの同質化が進み、言葉の使い回しが思考の使い回しを誘発します。
私たちが本当に鍛えたいのは、文字量を処理する能力ではなく、言葉の精度で世界を捉え直す力のはずです。
(本原稿は『耳を鍛えて4倍速読』の一部抜粋・加筆を行ったものです)







