リーダーによる働きかけは、細かな指示や声かけだけではありません。リーダーの姿や表情など、フォロワーがリーダーのシグナルを受け取れば、それは「働きかけ」の一つになります。第4回は、リーダーの働きかけとは何か、どのように作用するのかについて、神戸大学大学院教授で経営組織論、組織行動論を専門とする鈴木竜太氏が、経営学の知見をベースに解説します。本記事は、書籍『リーダーシップの科学』の第1章を一部抜粋・編集したものです。
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フォロワーにどう行動してもらうか
目標や成果が設定された上で、リーダーが考えるべきことは、それを成し遂げるためにフォロワーがどのように行動すべきかである。
軍隊のように作戦命令にしたがって、各人が指示されたことを確実にこなす必要があるのか。状況を鑑みて、自身で判断しながら行動する必要があるのか。リーダーが示すゴールの実現に向かって自分の利害を超えて行動していく必要があるのか。
リーダーはこれらを見極めた上で、自分がどのように振る舞うべきかを考えることになる。なぜなら、リーダーシップのスタイルや行動の違いによって、もたらされるフォロワーの行動が異なる場合があるからだ。
例えば、細かい指示命令と厳格な逸脱への対処を行うようなリーダーの振る舞いからは、自律的に自分の判断で行動するようなフォロワーの行動はまず生まれない。同様のリーダーのもとでは、ビジョンやリーダーの示す目標の実現に向かって、自己利益を超えて活動しようということも起こりにくいだろう。
リーダーシップ論では、図の基本構造の左半分にあたる、特定のリーダーの特定の行動(あるいは行動をもたらすと考えられる満足感やモチベーションなどの心的態度)がもたらす影響について研究が盛んに行われている。つまり、リーダーシップ論では、あるリーダーシップ行動が、フォロワーのどんな行動や心的態度に影響を与えているのかという因果関係に関する蓄積が膨大にある。
出所:鈴木竜太『リーダーシップの科学』(ダイヤモンド社、2025年)p.30より引用
もちろん、リーダーシップの研究者のように個別の論文を大量に読むことはないだろうが、基本的にはリーダーシップ論を学ぶことは、どのようなリーダーの振る舞いが、どのようなフォロワーの行動(あるいは心的態度)をもたらすかという知識を蓄積していくことを意味する。
リーダーはどのような働きかけを行うか
最後に考えるのは、やはりリーダーにとって重要なフォロワーにどのように働きかけるかということだ。一般的にリーダーによる働きかけはリーダーによる具体的な行動であり、リーダーシップ行動と呼ばれる。
しかし、リーダーによるフォロワーへの働きかけは、必ずしも眼に見える行動とは限らない。リーダーの言葉かもしれないし、その姿や表情かもしれない。また、リーダーシップをプロセスと捉えれば、具体的な行動や言葉、あるいは姿や表情など、最終的には何らかのシグナル(振る舞い)を受け取って初めて「リーダーによる働きかけ」になる。
伝わらない言葉や行動を繰り返しても、それはリーダーによる働きかけとは呼べない。さらに言えば、その働きかけも一度とは限らず、リーダーからの再三の働きかけによってようやく行動が起こることもある。その点ではリーダーシップはプロセスであるともいえる。



