動かずに人を動かした、東郷平八郎
また、具体的な働きかけがなくともフォロワーが動くこともある。日露戦争における日本海海戦において、東郷平八郎連合艦隊司令長官は旗艦である三笠の艦橋から動かず、海戦が終わりその場を離れた時には靴跡の部分だけが濡れていなかったという逸話がある。
真偽のほどはわからないが、船員は身動きせず立っている東郷を見て奮い立ち、献身的に行動したのかもしれない。
何もしない、動かないというのも働きかけの一つで、泰然自若とした表情や姿、東郷平八郎という存在が、人々を成果につながる行動へと動かしたともいえるだろう。
この点では、少し表現しづらいが、冒頭にも紹介した下記の図にもあるように一番左の部分はリーダーという存在であり、リーダーの(何もしないものも含めた)働きかけでもある。
出所:鈴木竜太『リーダ―シップの科学』(ダイヤモンド社、2025年)p.30より引用
リーダーシップ論では、フォロワーの行動を左右するリーダーの行動や振る舞いにはどのようなものがあるか、求められるフォロワーの多様な行動との対応関係から議論される。
例えば、権限を委譲するようなリーダーの行動から、フォロワーのどのような行動が促進され、どのような行動が抑制されるのかを明らかにしていく。リーダーシップ論では、これらの細かい検証された因果関係の束として、特定のリーダーシップ行動がもたらすものを明らかにしているのだ。
(本記事は、書籍『リーダーシップの科学』の第1章を一部抜粋・編集したものです)






