リーダーに求められる役割の一つに、「人を動かすこと」が挙げられます。しかし、「人をうまく動かす=優れたリーダーシップ」と言えるのでしょうか。神戸大学大学院教授で経営組織論、組織行動論を専門とする鈴木竜太氏が、経営学の知見をベースに、リーダーシップとは何かを解説します。第2回はリーダーシップの特徴とは何か考えます。本記事は、書籍『リーダーシップの科学』の第1章を一部抜粋・編集したものです。

【リーダーシップ集中講義:第2回】子どもたちを引き連れた「ハーメルンの笛吹き男」はカリスマリーダーか?Photo: Adobe Stock

リーダーシップの3つの特徴

 前回は、リーダーシップの研究のなかで一般的ともいえるリーダーシップの定義について述べた。

「リーダーシップとは、何をすべきか、どのようにすべきかを理解し、同意するように他者に影響を与えるプロセスである。また、共有された目標を達成するために個人や集団の努力を促進するプロセスでもある。」

 この定義をもとに考えると、リーダーシップの特徴が3つ見えてくる。

 1つ目に、リーダーシップには影響を与える他者が必要で、リーダーシップは他者との間に生まれるという特徴である。

 一般に、リーダーシップを及ぼす他者のことをフォロワーと呼び、フォロワーがいなければリーダーシップを振るうことはできない。当たり前のように聞こえるかもしれないが、リーダーシップとは、リーダーシップを振るう側に発生するわけではなく、(リーダー側からの働きかけで生じることがほとんどだが)リーダーとフォロワーの間で発生すると考える。

 2つ目に、この関係性から言えば、最初にリーダーとフォロワーが規定され、両者の間にリーダーシップが発生するわけではない。リーダーシップが発生した時、そこで初めて(そのリーダーシップに関して)リーダーとフォロワーが発生することを意味する。見方を変えれば、リーダーシップを発揮する主体=組織や集団の公式のリーダーとは限らないと考えることもできる。

 3つ目に、リーダーシップは共有された目標を達成するために行使される。言い換えれば、リーダー本人のみの自己利益のために振るわれるものは、リーダーシップとは呼ばない。そのため、フォロワーとの間で目標が共有されていない場合、そこにリーダーシップ(と呼ばれるもの)は発生しない。

ハーメルンの笛吹き男は「カリスマリーダー」か

 童話『ハーメルンの笛吹き男』を思い起こしていただきたい。ハーメルンの街にネズミが大量発生し、困っていたところに、笛吹き男が現れた。男が笛を吹くと、町中のネズミが彼のもとに集まり、男はネズミを川へと引き連れ、ネズミを溺れさせて退治した。

 しかし、ネズミを退治したにもかかわらず、約束の報酬が支払われなかったことに怒った男は、今度は笛を吹いて、子供たちを引き連れていった。子供たちは連れられて行くが、どこに連れて行かれるかはわかっていない。

 フォロワーである子供たちが笛吹き男の笛に影響を受けていることは確かだ。だが、子供たちと目標を共有していないとすれば、それはリーダーシップではないということだ。

共通の目標が不可欠である

 改めて定義から見える特徴は、

①リーダーシップはリーダーとフォロワーの間で発生するものである
②リーダーシップが発生することでリーダーとフォロワーが決まる
③リーダーシップはリーダーとフォロワーの間に共有された目標が必要である

 という3つである。

 リーダーシップがフォロワーとの間に生まれるものであるとするならば、リーダーシップの源泉はリーダーの側だけにあるとは限らない。

 また、公式のリーダー(つまりはリーダー役の人物)であれば、リーダーシップを自動的に取得しているわけでもない。公式的にはフォロワー的な役割の人が、リーダーシップを発揮することもあり、その場合にはフォロワー役であった人がリーダーとなる。その意味ではリーダーとフォロワーの関係はその場によって決まる。

 そして、リーダーシップは共有した目標の達成のために使われるものであり、そうでない関係性のものはリーダーシップとは呼ばない。リーダーとフォロワーの間には共通の目標があり、そこに向かうために振るわれるのがリーダーシップである。

(本記事は、書籍『リーダーシップの科学の第1章を一部抜粋・編集したものです)