「サーバント・リーダーシップ」「シェアド・リーダーシップ」――次々と新しい概念が登場するなかで、現場のリーダーは本当に成果につながる考え方を身につけられているのだろうか。『増補改訂版 ヤフーの1on1』の著者でもある本間浩輔氏は、流行のリーダー論を追いかけるほど、「どういう成果を目指すのか」という構想が置き去りにされがちだと指摘する。鈴木教授の新刊『リーダーシップの科学』をめぐる二人の対話から、ブームに振り回されないための視点を探る。
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最新のリーダー論を追っても
「よいリーダー」にはなれない
――『増補改訂版 ヤフーの1on1』の著者として、鈴木竜太先生の新刊『リーダーシップの科学』を読まれていかがでしたか。
本間浩輔(以下、本間):世の中にはいろいろなリーダーシップの理論があります。でも、「サーバント・リーダーシップ」だとか「シェアド・リーダーシップ」だとか、この本はそんなことについて書いてない。
「今日はこういうリーダーシップ」「明日はこういうリーダーシップ」って、どんどん新しいリーダーシップに乗り換えていった結果、皆どうあるべきかという構想も考えずに、ブームに乗って、よいリーダーになった気になっている。その原因はダイヤモンド社がどんどんそういう本を出すからだとも思います(笑)。
本当に必要なのは「リーダーシップのリテラシー」なんです。『リーダーシップの科学』はそれに近いな、と思う。ちゃんとこの構図で考えようとか、リーダーシップのセオリーをどんどん置き換えていくんじゃなくて、幅を広げていくような内容だと感じました。
――この本のなかでは「よいリーダー」と「よいリーダーシップ」が書き分けられています。現状、どちらが足りないと思われますか。
本間:両方。
鈴木竜太(以下、鈴木):足りないっていうのはよく分からないところがありますが、想像力がだいぶ薄れているのかなというのはありますね。どうやったらフォロワーである部下を動かし、何かを成し遂げられるのか。その想像にバラエティーが少ないのかなという気はしますよね。
――それはなぜだと思いますか。
鈴木:色んな理由があると思いますけど、やはり基本的には人間に対する理解やイマジネーションがあまり育まれずにきているのかなという気がします。
たとえば本を読むと色んな人の人生なり、変わった考え方の人が登場してきます。アルベール・カミュの『異邦人』では、主人公が母を殺した理由を「太陽が眩しかったから」と説明するんです。「そんな人がいるのか」と思いますよね。でも、そういう人もいるかもしれない。色んな人と多様に交わるというよりは、近しい考えの人たちと過ごすっていう現代の流れもあるんでしょうか。



