リーダーシップという言葉は、誰もが知っており、日常生活にも溶け込んでいます。けれども、「リーダーシップがある」とはどのようなことか、いざそれを説明しようとすると難しいのではないでしょうか。今回から7回にわけて、神戸大学大学院教授で経営組織論、組織行動論を専門とする鈴木竜太氏が、経営学の知見をベースに、リーダーシップとは何か、その本質を解説します。初回は大前提となる「リーダーシップが何を指すのか」を、経営学の定義を軸に深掘りします。本記事は、書籍『リーダーシップの科学』の第1章を一部抜粋・編集したものです。

【リーダーシップ集中講義:第1回】実はよくわからない…経営学の定義からみえる「リーダーシップの正体」Photo: Adobe Stock

そもそも「リーダーシップ」とは何か

 すでにある程度研究が進んだ世界を知る上で、定義から考えることは王道といってもいい。それは、あやふやな言葉で単に議論を迷走させないようにするということだけでなく、定義からわかるリーダーシップの姿があるからだ。

 もう1歩踏み込んで言えば、定義を丁寧に理解していくことで、リーダーシップが「なんだかわからないもの」から「手に負えるもの」になる

 まずは、リーダーシップの定義から考えるリーダーシップの基本的な考え方について説明していく。(少なくともリーダーシップ論が議論してきた)リーダーシップとは何かを、実体を持って見えるようになって欲しい。

リーダーシップという言葉からイメージされる答えは、多種多様

「あの人にはリーダーシップがない」「リーダーシップを持って取り組む」などのように、リーダーシップという言葉は、ビジネスはもちろん、スポーツや学校といった日常の場面でも使われるようになった。最近では、大学生や高校生だけでなく、小中学生にもリーダーシップ教育が行われている。

「リーダーシップとは何か」と小中学生に質問されたら、あなたはどう答えるだろうか。皆を引っ張っていく能力か。それとも、皆で何かを成し遂げる力か。それとも、皆の手本となる人か。おそらく、いろいろな答えが返ってくるだろう。

 私は学生に「皆さんの考えるリーダーシップを表現してください」と問いかけ、レゴを使ってリーダーシップを表現してもらうワークをよく行う。一瞬、学生たちは戸惑いを見せる。しかし、さまざまなパーツを手に取りながら、しばらくするとそれぞれが「リーダーシップ」を具現化した作品を完成させてくる。

 彼らの表現は一つとして同じものは無く、人形を用いる学生もいればブロックだけで表現する学生もいるが、それらはおおむね3つのリーダーシップの姿になる。

【リーダーシップ集中講義:第1回】実はよくわからない…経営学の定義からみえる「リーダーシップの正体」出所:鈴木竜太『リーダーシップの科学』(ダイヤモンド社、2025年)P24より引用

 まず1つ目は、リーダーと思しき人形(ミニフィグ)を前方に置き、その後ろにフォロワーたちを配置するパターンだ。リーダーがフォロワーの側を向いており、リーダーがあたかも親のようにフォロワーの行動を見守りながら管理する姿を表している。

 2つ目は、1つ目と同じくリーダーが前方に置かれているが、フォロワーに背中を見せているパターンだ。リーダーが率先して行動し、フォロワーがそれに従うような姿を表現している。

 3つ目は、リーダーのミニフィグが、前を向いているフォロワーの後ろに配置されるパターンがある。そこでは、リーダーがフォロワーの行動を見守り、支えるような姿勢がより強く表現される。

 これら以外にも、殿様と家臣のように、リーダーを中心に置き、その周囲にフォロワーを配置する、リーダーを一段上のブロックに置く、さらに細かく言えば、フォロワーの顔の向きがバラバラか、ある一定方向を向いているのかなど、それぞれの考えが反映された作品も生まれる。

 もちろんどれが正しいリーダーシップの理解であるということはなく、いずれもリーダーシップの一側面である。自分の思い描くリーダーシップが隣の人にとっても同じとは限らないのである。