かつては「終身雇用」が世の中の常識だったが、昨今は「転職」が日常的なキーワードになってきた。近年、企業の採用計画の中途採用比率は43%まで上昇している。特にITやDXのような専門性の高い職種は中途比率が高くなる傾向がある。また、若い世代ほど転職者の割合は大きい。
しかし、いわゆる「よそ者」が職場に入ってきた場合、その人の振る舞いはどうしても注目されることになる。ましてやそれが「リーダー」のポジションであればなおさらだ。
P&Gを経てマクドナルドやファミリーマートなどで活躍しているマーケター・足立光氏は、『即戦力! 転職、転勤、出向、異動するときに読む本』(ダイヤモンド社)を刊行した。そこには、自身の経験を踏まえて「新参者」が新しい職場でどう振る舞うべきかが詳細に記されている。
「転職」だけではなく「社内異動」「転勤」「出向」でも状況はほぼ同じだ。職場が変わった、あるいはもうすぐ職場を移ることが決まっている人は、ぜひ読んでいただきたい。
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早く成果を出すためには、
早く「仮説」を持つ
転職にせよ、異動にせよ、転勤、出向にせよ、移る前に「自分が移ったら、こんなふうにすればいいのではないか」という自分なりのアイデア、仮説を持っておくことはとてもとても重要です。
早い段階で仮説を持っておくと、すぐにその仮説を検証したり、仮説に基づいたアクションを実行に移せるので、何かの成果を早期に手にできる可能性が高くなります。ところが、事前に仮説づくりをしていない「白紙」のまま新しい環境に飛びこんでしまう人が少なくありません。
転職でも、異動でも、移ってから1年間くらいは準備期間なのでは、という考えを持っている人もいます。1年くらいは事業理解にかかるのではないか、と。
これでは、すばやい成果は期待すべくもありません。小さな成果でも、早く出すことができれば、職場における自分の印象が大きく変わることは言うまでもありません。そうなれば、さらに大きな打ち手を実行できる可能性が高まりますし、評価も当然、上がります。
とりわけ管理職ならば、新しい仕事に慣れるまで1年くらいは待ってもらおう、などというのは職務怠慢です。早く成果を出せたほうがいいに決まっています。
日本の会社の場合は「ジョブ・ディスクリプション」、つまり何の数字をいつまでに、どうやって、どのくらい上げるのかという期待値が明確でないケースが少なくありません。期待値がはっきりしていなければ、結果も見えにくいので、なんとなく動いてしまうことになりがちです。だから入社前、あるいは異動前の段階で、期待値をしっかり確認することも大切になります。
私は外資系企業も数社経験していますが、異動する前に「こうすればいいのではないか」というアイデアや仮説を持っておくことは極めて普通のことでした。
欧州系の化粧品会社では、部長レベル以上の役職の人は就任「初日」に「私はこの会社・部門をこう変えたい」というプレゼンテーションをするのが通例でした。自分が日本支社の代表を務めたヘンケルでは「30days」という言葉があり、新しいポジションに就いて30日後には、何をどのように変革するのかという「仮説」が求められました。このくらいのスピードで動くのが、世界的には当たり前なのです。
入社前、異動前から準備は始まっています。例えば社内であれば、いいと思えるところはどこか、何をやり残したと考えているかを前任者に聞く。上長に話を聞くのもいいでしょう。同僚で知り合いがいるなら、職場の状況を確認しておくのもいいかもしれません。
異動は同じ会社で違う部署や支店、違う国に移動することになるわけですが、ノウハウも人間関係もゼロから作らないといけないので、実際にはゼロスタートのようなものです。私にも社内での異動の経験は何回もありますが、私の感覚では転職と変わりません。
同じ会社であるが故に、カルチャーが同じなので転職よりはリスクが低いとはいえます。しかし、新しい人と新しい仕事をするという意味では、転職とそれほど変わりはないのです。入ったらこうしよう、という仮説を早めに持っておいたほうがいいことは間違いありません。
ハーバード大学で1979年から10年間かけて行われた調査があります。「目標を持って紙に書いている」学生は全体のわずか3%だったそうですが、10年後、再び調査すると、その3%の元学生の平均年収は、残りの97%の元学生のなんと約10倍だったそうです。
こうしたいという思いが明確であればあるほど、成功しやすくなるのです。ある程度の期間は、新しい事業や部署の仕事を覚えるための期間があるとしても、ただ慢然と学ぶのと、「自分の仮説は正しいのか」と検証しながら学ぶのとでは、その学習の効果やスピードはまったく違ってくることはご想像いただけると思います。
※本稿は『即戦力! 転職、転勤、出向、異動するときに読む本』足立光(ダイヤモンド社)からの抜粋記事です。






