「あなたは人生というゲームのルールを知っていますか?」――そう語るのは、人気著者の山口周さん。20年以上コンサルティング業界に身を置き、そこで企業に対して使ってきた経営戦略を、意識的に自身の人生にも応用してきました。その内容をまとめたのが、『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』「仕事ばかりでプライベートが悲惨な状態…」「40代で中年の危機にぶつかった…」「自分には欠点だらけで自分に自信が持てない…」こうした人生のさまざまな問題に「経営学」で合理的に答えを出す、まったく新しい生き方の本です。
この記事では、本書の内容に関するインタビューを掲載します。(構成:小川晶子)

季節の兆しカレンダーPhoto: Adobe Stock

仕事ができるかは「能力」ではなく「ポジショニング」で決まる

――自分の個性やキャラクターを活かして活躍したいと考えたとき、「どこで活動するのか」は重要な要素になりますか?

山口周氏(以下、山口):そうですね。『人生の経営戦略』で紹介しているフレームで言うと、ポジショニング理論がそれに当たります。

ポジショニング理論では、企業の競争優位性は、その企業の内部の資源や能力よりも、その企業の置かれた場所や環境に大きく左右されると考えます。

これは、個人の人生戦略でも同じです。

自分のキャラクターも、周囲にどんな人たちがいるのかによって自ずと決まる面があります。

僕はこれがジグソーパズルに似ていると思っています。ジグソーパズルのピースの形は何で決まるのかというと、周囲のピースによって決まりますよね。ピースをなくして「このピースを送ってください」とジグソーパズルの会社に連絡するときは、周りの8ピースを送るんですよ。すると、欠けているピースがわかるので送ってもらえます。

――面白いですね。周囲にうまくハマればいいですが、自分のキャラクターの設定ミスでハマらないこともありそうです。

山口:「自分の強みはこれだ」と思い込んでいる場合は危険ですね。人間の自己評価には非常に強い上方バイアス、つまり「実際の自分の能力よりも上側に誤って評価してしまう傾向」があることが研究でわかっています。自分の「強み」や「得意」は、勘違いであることが多いのです。ですから、「自分は何が得意か」という論点を軸足にしてキャリアを選択しようとすると、うまくハマらないおそれがありますね。重要なのは「強み」ではなく「特徴」を抽出することです。

自分のキャラを作るうえでのポイントは、「ずっとやってきたこと」や「苦にならずにできてしまうこと」をネタにすることだと思います。

キャラを変えたいなら○○を変えろ

――たとえばいまは「控えめで周りの人を立てる役回り」だけれども、「発信力があって、自分のやりたいことをどんどんやるキャラ」に変わりたいなど、現状のキャラを変えたい場合には、何をしたらいいと思われますか?

山口:周囲との関係性の中でキャラが固定化し、そこから抜け出たいという悩みを持つ人もいますよね。

アメリカでは、そういうとき住む場所を変えます。広大なので、東から西へ移るだけで舞台設定が変わるんですよ。人間関係もガラっと変わり、人生リセットみたいにできるんです。

日本の場合、どこへ行ってもそれまでの関係がついて回るところがありますが、それでもあえてアドバイスするならやはり「場所を変えろ」「仲間を変えろ」ということです。

キャラを使い分けてバランスを取る

それから、いまはバーチャル空間での社会活動、経済活動が大きくなっています。実社会とバーチャル社会との両方に活躍できる場を作るのはいいんじゃないかと思います。場合によっては、違う名前で、キャラを使い分けて活動することができますよね。

――確かに。ネット上のコミュニティで実社会のキャラとは違うキャラでやっている人もいると思います。

山口:それも健全なことだと思います。昔は、会社では生真面目な管理職としてやっているけれど、会社を出たらスナックに行って違うキャラ、家に帰ったらまた違うキャラという感じで仮面を使い分けるようにしていたものです。こっちの場所では抑えなければならない自分を、あっちの場所で出す。そうやって人格的にもバランスを取ることができたんです。

そもそもパーソナリティという言葉は「仮面=ペルソナ」が由来です。ユングの言う「ペルソナ」とは、日常生活でいろいろな顔を使い分けて社会に適応することを指しています。

それが、デジタルデバイスが入り込んできて、常に統一されたパーソナリティでいなくてはならないような感じになってしまった。再びひっくり返って、バーチャル空間でキャラを使い分け、人格としてバランスを取るようになると考えると面白いですね。

(※この記事は『人生の経営戦略』を元にした書き下ろしです。)