トキは松江のシンデレラ
錦織の秘密を知っている庄田。サワに「思うところがあるんじゃない、あの記事」とたずねる。
「わしの思い違いだったら別にいいんだけど、ごめん余計なことを」とグイグイこじ開けようとするのではなく、あくまで紳士的なので、サワもつい話してしまう。
「おトキは幼なじみで小学校も一緒で長屋も一緒で、お互いずっと貧しくて、いや、おトキの方がもっともっと貧しくて『恨めしい、恨めしい』言いながらずっとずっと一緒に傷をなめあってきた一番の親友だったんです。だども、ある日、突然ヘブン先生と一緒になって あっという間にこげなことに」
話を聞いて庄田はトキを「シンデレラだね」と言う。サワはシンデレラを知らなかった。
「西洋の物語で、貧しい女性の元に、ある日王子様が現れてみるみるうちにお姫様になってしまう。おトキさんは松江のシンデレラだよ」
「だからおサワさんが面白く思わないのも――」と庄田が言いかけると「私はそげなこと」と遮るサワ。でも「おもっちょります」と肯定した。
「でも、嫌いとか憎いとかではないんです。おトキのことは今でも好きだし、応援してもらうのもありがたい」。そう言うときのサワの声はふだんより少し高い。気持ちが高ぶっているのだろう。
「でも、なんというか、なんというか……」これが今週のサブタイトル「ナント、イウカ。」である。
サワの言語化しづらい複雑な心境を「わかるよ、じつはわしにもそういう友人がいる。そいつもまあシンデレラとは違うが、みるみるうちに出世して」。
これは錦織のことだ。庄田は帝大に受かって教師の免許をとったのに、帝大を落ちて教員免許もないのに出世している錦織を庄田はどう思っているのか。庄田は彼への感情をサワには語らない。
「とにかく頑張ろう。おトキさんを見返すでも何でもいい。とにかくわしもついてるから」とだけ言う。
その頃、1階にトキはビールを買いに来ていた。山橋に、新聞を読んでサワががんばっていると聞いて、うれしくなるトキ。でも気を使って2階に会いに行くことはできない。
「でもありがとうございます、教えてくださって」
「いいえ」
「ありがとう存じます」何度もお礼を言って帰るトキ。
「おサワーがんばってー」と2階に向かってエールを送り、うれしくてスキップして、ついビールをふりまわしてしまう。家であけたら、激しくあふれ出てしまいそう。
道行く人はトキのことを「変わったもんだねえ」と言っている。いい着物を着ているからか、スキップがうまくなっているからか。明るくなっているからか。
それにしても、錦織のニセ教師疑惑には驚いた。何も起こらない物語じゃない、けっこう大事件じゃないだろうか。









