働き方が多様化するなか、「定年=引退」というモデルは過去のものとなりつつある。では、65歳以降、豊かに暮らすにはどうすればいいのか。そして、定年後の仕事にはどんな選択肢があるのか。本記事では『月10万円稼いで豊かに暮らす 定年後の仕事図鑑』の著者・坂本貴志氏にインタビューを実施。仕事の実態を、就業データと当事者の声をもとに紐解いてもらった。(構成・聞き手/ダイヤモンド社書籍編集局、小川晶子)
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シニアが働きやすい仕事につく
――『定年後の仕事図鑑』には、高齢期から始めやすい19職種100の仕事が紹介されています。ここに掲載している仕事の選定基準はどのようなものですか?
坂本貴志氏(以下、坂本):総務省「国勢調査」をもとに、各職種の就業人数とその中における65歳以上の就業者が占める割合を算出し、高齢期の就業者が一定の数と割合で働いている職種を割り出すことで「就業しやすい職種」を特定しました。
――実際に多くのシニアが働いているということですね。
坂本:そのうえで、医師や弁護士、エンジニアなど特別な資格や長期の経験が必要であるものを除き、シニアの方の満足度の高い仕事を選んでいます。
――65歳以上の人がとくに多く働いている職種は何ですか?
坂本:本書にはさまざまな角度でランキングを掲載していますが、「65歳以上の比率ランキング」で言うと、1位農業(53.0%)、2位施設管理(52.1%)、3位清掃員(36.1%)となっています。
農業従事者は、50代~60代前半は比較的少なく、60代後半で急激に増加するんです。定年後に就農するケースや、親から経営継承するケースも多いようです。
2位の「施設管理」は、マンション・アパートの管理人、駐車場や駐輪場の管理人、市民センター、公園など公共施設の管理人といった仕事ですね。労働時間が短めで、ひとり仕事が多くマイペースにできるという特徴があります。同時に、利用者さんとのコミュニケーションも欠かせません。
3位の「清掃員」は、ビル・建物、公園・道路などの清掃員、ハウスクリーニング職、廃棄物処理作業員、電車や船、車などの清掃員です。作業量は多めですが、短時間で働ける仕事ですね。
――これらの職種は、実際に働くシニアの方々をよく目にするのでイメージしやすいですね。
趣味や知識をいかす
――本書には事例もさまざま載っているので、「こんな仕事があるんだ」と発見があって面白かったです。趣味が高じて仕事になっている例もあり、いいなと思いました。
坂本:博物館で展示説明のアルバイトをされている方もいらっしゃいましたね。もともと鉱物が好きで、フィールドワークが趣味だったという70歳の男性です。知識を活かして人に喜んでもらい、お金にもなると考えるととてもいいですよね。この方は平日に3日間倉庫のピッキングの仕事をし、日曜日に博物館で仕事をしているとのことでした。
教えられる趣味があれば、習い事の先生もいいと思います。音楽、絵画、書道、英会話、それから将棋や麻雀なども習い事になりますから。
もちろん塾講師もあります。総合商社で60歳まで勤めたあと、65歳まではいくつかの会社で役員を務めたという男性は、定年後は趣味と実益を兼ねていろいろな仕事にチャレンジされています。その一つが塾講師です。得意な日本史や国語、英語を中心に、小学生から高校生まで教えているそうです。人に勉強を教えた経験はほとんどなかったとのことですが、昔の自分に戻ったような気持ちで本を読んだり勉強をしたりして、楽しんで教えているとおっしゃっていました。
――子どもが好きで、体力があれば保育補助の仕事や学童保育指導員などもいいですよね。私は、自分がやるなら図書館のバックハードの仕事もいいなと思いました。
定年後の独立開業の落とし穴
――定年後は自宅近くで雇用してもらうか、フリーランス・業務委託のかたちで仕事を受けるかして「小さな仕事」で収入を得つつ社会に貢献するのが基本路線だと思いますが、独立開業して店を開くといった方向はどうでしょうか?蕎麦屋を開くとか、古本屋を始めるとか……。
坂本:これまでやりたかったことをやってみるのは非常に良いことだと思いますね。現役時代にはなかなか挑戦できなかったことも、支出の少ない高齢期なら挑戦できるのではないでしょうか。
ただ、店舗を持つなど大きな初期投資が必要なものについては、金銭的なリスクが大きいのであまりおすすめはしていません。高齢期に私財をなげうって挑戦し、失敗した場合、稼いで取り戻すのが難しくなるからです。
自宅を利用するとかネットをうまく使うなどして、できる限り初期投資を少なくし、小さく始めるのが良いと思います。
(※この記事は『定年後の仕事図鑑』を元にした書き下ろしです)
リクルートワークス研究所研究員・アナリスト
1985年生まれ。一橋大学国際・公共政策大学院公共経済専攻修了。厚生労働省にて社会保障制度の企画立案業務などに従事した後、内閣府で官庁エコノミストとして「経済財政白書」の執筆などを担当。その後三菱総合研究所エコノミストを経て、現職。研究領域はマクロ経済分析、労働経済、財政・社会保障。近年は高齢期の就労、賃金の動向などの研究テーマに取り組んでいる。著書に『月10万円稼いで豊かに暮らす 定年後の仕事図鑑』のほか、『ほんとうの定年後「小さな仕事」が日本社会を救う』『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』(共に、講談社現代新書)などがある。




