「どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか」――。この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊『客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、同書に収録されている75の事例の中から、特に現場で導入しやすく、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選して紹介していきます

なぜ、バルや居酒屋でワインや日本酒の「3種飲み比べセット」があるのか?Photo: Adobe Stock

「どれにするか迷う」
その心理が販売のチャンス

 ワインバーや日本酒が売りの居酒屋に入ると、メニューに必ずといっていいほど登場するのが「3種飲み比べセット」です。

 ・世界の赤ワイン3種飲み比べ 1100円
 ・地酒利き酒セット(辛口・旨口・フルーティ) 1200円

 これは単なるお得なセットではありません。「どれを選べばいいか迷う心理」と「ちょっとずついろいろ飲みたい欲求」を見事に捉えた、非常に賢い販促戦略なのです。

「一つに決められない」
という迷いを解決する設計

 お酒に詳しくない人ほど、メニューに並ぶ銘柄名だけでは「違い」がわかりません。「どれが自分の好みかわからない」「せっかくならいろいろ試したい」、そんな心理が働きます。

 ここで単品注文だけだと、結局「いつものやつで」となってしまいがちです。

 そこで登場するのが、選ぶ必要がない「飲み比べセット」です。

 これにより、

 ・「外したら嫌だな」という不安がなくなる
 ・「せっかくだし試してみよう」という前向きな気分になる
 ・「ちょっと特別感のある体験」ができる

 この設計は、「決定回避の法則」を解決するための「選択の設計」です。

 人は選択肢が多すぎると、「選ぶことが面倒になり、何も選ばない」という行動(決定回避)に陥りやすい性質があります。

 飲み比べセットは、「どれか一つ」という複雑な選択を「セットにするか否か」というシンプルな二択に置き換えることで、お客様の心理的なハードルを一気に下げた購入の道筋を完成させるのです。

「自分の好みを見つけた」という体験が、
次の注文を誘導する

 飲み比べセットは、「比較」することで初めて「違い」がわかるという、学びと発見の仕掛けでもあります。

 ・Aは酸味が強い
 ・Bはまろやかで飲みやすい
 ・Cは香りが好みだった

 このように、違いを実感したあとに、「じゃあこのCをもう一杯」と、納得感のあるリピート注文へつながります。つまり、飲み比べセットは、次に来る単品注文のための「お試し商品」としての役割も果たしているのです。

ちょっとずつという贅沢感が
満足度を引き上げる

 飲み比べセットは、量こそ少なめでも、「3種類あることで豪華に見える」「比較体験ができる」「知的な楽しさがある」など、「体験の厚み」が価格以上の価値を演出します。

 これは、「バンドリング効果」と「メンタルアカウンティング(心の会計)」を利用しています。

 ここでいう「バンドリング効果」とは、複数の商品を一つにまとめることで、個々の価格を意識させず、セット全体を「お得で魅力的な一つの体験」として認識させることをいいます。

 また「メンタルアカウンティング」とは、飲み比べセットが知識や体験という精神的な口座に価値を蓄積するため、お客様に金額以上の心の満足を与える=費用対効果(コスパ)を高く感じやすいということです。

他のお店でも活用できる
「比較体験型のメニュー」

 この飲み比べセットの考え方は、他の業種やメニューにも応用可能です。共通するのは、「一つに絞れない」「ちょっとずつ楽しみたい」「違いを知って選びたい」というお客様の心理に寄り添っている点です。

 ・焼肉店:部位別(カルビ・ハラミ・ロースなど)食べ比べセット
 ・スイーツ店:チーズケーキ3種(ベイクド・レア・バスクなど)セット
 ・パン屋:食パン3種(プレーン・全粒粉・米粉)食べ比べセット

まとめ

 バルや居酒屋が「3種飲み比べセット」を導入するのは、

 ・「決定回避の法則」を解決する「選択の設計」である
 ・「バンドリング効果」で、体験価値を向上させる
 ・比較による「お気に入りの発見」からのリピート誘導

 という、商品自体が「販促ツール」になる戦略なのです。あなたのビジネスにも、「ちょっとずつ」「比較できる」「選ばせるのを助ける」体験メニューを加えることで、迷っていたお客様が納得して選べる仕組みを作ることができるはずです。

(本稿は『客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』の一部を抜粋・編集したものです)

岡本達彦(おかもと・たつひこ)
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。