「どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか」――。この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊『客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、同書に収録されている75の事例の中から、特に現場で導入しやすく、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選して紹介していきます

なぜ、一部の高級車ブランドは、顧客限定の「非公開イベント」を定期的に開催するのか?Photo: Adobe Stock

「選ばれた喜び」が、
ブランドへの忠誠心となる

 高級車ブランドや、高額な宝飾品、プライベートバンクなどのサービスは、一般消費者向けの広告をほとんど行わず、その代わりに、既存の顧客限定で「新作の先行披露パーティー」「オーナーズ・ラウンジでの懇親会」といったイベントを定期的に開催します。

「なぜ、わざわざ顧客を絞ってイベントをするのだろう?」「もっと多くの人を招待して、見込み客を増やしたほうが売上につながるのではないか?」と思われるかもしれませね。

 でも、この「排他性の高いイベント」こそが、お客様の「特別な存在でありたい」という承認欲求を満たし、「このブランドの顧客であり続けることの価値」を最大化するための高度な販促戦略なのです。

 人は、誰もが入手できるものよりも、「選ばれた人だけ」が享受できる特権に、より強い価値を感じる性質があります。

 これは、「希少性の原理」を「人間関係」に適用したものです。

 非公開イベントは、お客様に「あなたは、このブランドにとって最も重要な、選ばれた存在です」という、排他性の高いメッセージを伝えます。

 ・優越感の獲得:一般客が体験できない場所で、新作を誰よりも早く見たり、特別なサービスを受けたりすることで、強い優越感と自己肯定感を得る

 ・コミュニティへの所属:イベントを通じて、自分と同じレベルの富裕層やブランドの専門家との交流が生まれることで、「私はこの特権的なコミュニティの一員だ」という所属欲求が満たされる

 この「選ばれた喜び」が、お客様の心の中に「このブランドを手放すことは、この特権的な地位を失うことだ」という強い心理的損失(損失回避の法則)を生み、長期的なロイヤリティへとつながるのです。

「特別な体験」を自慢したい

 イベントで得られた特別な体験は、お客様の「自己呈示の欲求」を満たすための、最高「自慢のネタ」となります。

 ・ソーシャルリワード:参加したイベントの様子をSNSで共有する行為は、「私は特別な体験ができる人間だ」という自己イメージを他者にアピールする社会的報酬となる

 ・情報カスケード:お客様が自発的に、「限定イベントの様子」をシェアすることで、そのブランドの「ステータスの高さ」が、お客様の友人・知人という信頼性の高いチャネルを通じて、無償で拡散される

 高級ブランドは、自ら広告を出すよりも、顧客自身の優越感を刺激することで、最も効果的で、信頼性の高い「口コミ広告」を生み出すことを知っているのです。

この販促の仕掛けは、
他のお店でも使える

 この「排他性を利用したイベント」の戦略は、あらゆる業種で応用可能です。重要なのは、「参加へのハードル」を設け、「選ばれた感」を徹底的に演出することです。

 ・パーソナルジム:有料会員の中でも、「1年以上継続した顧客」限定で、「プロのモデルが行う特別トレーニング」への参加権を抽選で付与する

 ・美容室:顧客の中で「年間利用額が上位10%」の顧客限定で、「新作トリートメントの無料先行体験会」を営業後の非公開時間に行う

 ・ワインショップ:定期的に高額なワインを購入する顧客に対し、「今月、パリから直輸入された未公開のヴィンテージワインの試飲会」への招待状を送る

まとめ

 なぜ一部の高級車ブランドは、優良顧客限定の「非公開イベント」を定期的に開催するのか?

 それは、

 ・「排他性の演出」により、「選ばれた特権的な顧客」という優越感を与え、ブランドへの愛着を最大化する
 ・コミュニティへの所属意識を強化し、「ブランドを手放すこと」を「特権的な地位を失う損失」へと変換する
 ・「自己呈示の欲求」を刺激し、イベントの体験を「自慢のネタ」に変えることで、無償で質の高い口コミ広告を生み出す

 という、お客様の「承認欲求」の感情に深く働きかけ、「顧客の定着」と「新規顧客への信頼性」を同時に高める販促戦略なのです。

 あなたのビジネスにも、お客様の「特別な存在でありたい」という欲求を刺激する「招待状」という仕掛けはありますか?

(本稿は『客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』の一部を抜粋・編集したものです)

岡本達彦(おかもと・たつひこ)
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。