【解説】組織マネジメントにおける「持続可能なやる気」の作り方
この「ドーパミン的共感(刺激)」と「オキシトシン的共感(安心)」の違いを理解することは、組織を率いるリーダーにとって極めて重要な視点となります。なぜなら、部下のモチベーション管理やチームビルディングの成否は、まさにこの脳内物質のバランスにかかっているからです。
多くの企業では、成績優秀者の表彰やインセンティブ、あるいは競争意識を煽るといった手法がとられます。これらは「ドーパミン」を分泌させ、爆発的な行動力を生むには効果的です。しかし、ドーパミンによる意欲は「もっと強い刺激」を求め続けるため、いずれ枯渇し、燃え尽き症候群や、報酬がないと動かない「指示待ち」の状態を招くリスクがあります。
一方で、オキシトシンを中心としたマネジメントは、即効性こそ低いものの、「このチームにいると安心する」「仲間のために頑張りたい」という持続可能なエンゲージメントを生み出します。
「心理的安全性」の正体は、オキシトシンにある
近年、ビジネスの現場で重要視されている「心理的安全性(Psychological Safety)」。これも脳科学的に見れば、チームメンバーの脳内にオキシトシンが十分に分泌されている状態と言い換えられます。
恐怖や不安(ノルアドレナリン)ではなく、安心感(オキシトシン)が土台にあるチームでは、ミス隠しがなくなり、建設的な意見が飛び交い、結果としてイノベーションが生まれやすくなります。リーダーが目指すべきは、部下の脳を興奮させることではなく、「脳をリラックスさせ、パフォーマンスを最大化できる土台」を作ることなのです。
「何をしたか」ではなく「そこにいること」を認める
では、どうすればオキシトシン的共感を生み出せるのでしょうか? 難しいテクニックは必要ありません。部下が成果を上げたときだけ「いいね!(賞賛)」をするのではなく、日頃から挨拶を交わす、目を見て話を聞く、体調を気遣うといった「存在そのものを承認する関わり」を持つことです。
「あなたを大切に思っている」というメッセージが、非言語レベルで伝わったとき、部下の脳内にはオキシトシンが広がり、強固な信頼関係(ラポール)が築かれます。数字や成果という「刺激」で人を動かすのではなく、信頼と安心という「絆」で組織を動かす。それが、これからの時代に求められる「オキシトシン・リーダーシップ」なのです。
※本稿は、『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。









