◆「すごいね!」と褒める上司はニ流? 部下を“承認依存”にする「インスタントな共感」のワナ
部下が動かない、Z世代との距離感がつかめない……そんな悩みを解決するのが、ソフトバンクで「汐留の母」と呼ばれた澤田清恵著『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)だ。生身のリーダーに求められる最強の武器は生成AIには代替できない「コミュ力(共感力)」。単なる同情ではなく、相手の視点を論理的に理解する「認知的共感」の技術を体系化した、悩める上司たちの「読むサプリ」だ。呼吸を合わせる基本から、自身の無意識を言語化する応用、さらには「飲み会の失敗事例」や「エース部下の退職」といった実例に基づく「しくじり」分析まで網羅。表面的なテクニックではなく、心・技・体を整え、信頼で組織を動かすための実践的ノウハウが詰まった決定版!
※本稿は、『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
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数値化された承認と「ホンモノ」の境界線
SNSで「いいね!」がたくさんつくと、「自分の投稿に共感してくれる人が増えた」とうれしくなるかもしれません。でも私は、「バズるほどの『いいね!』」が、本書でテーマとしているような“ホンモノの共感”とは必ずしも一致しないと考えています。
そもそも「いいね!」の数が多いこと=共感を集めているということではありません。
短縮される時間と、加速する「反応」の連鎖
特に気になるのが、「TikTok」のようなショート動画アプリで「いいね!」を求めて必死になっている人たちです。TikTokは、世界中で15億人以上、日本国内でも月間アクティブユーザーが3300万人にのぼるともいわれる人気アプリです。
動画は基本的に30秒以内ですが、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視する視聴者は、そこまでのんびりと見てはくれません。
刺激の暴走が招く、命を賭した「依存」の罠
動画制作者は、わずか数秒で「いいね!」を引き出すために、どんどん刺激の強いコンテンツをつくろうとします。その結果、「地下鉄サーフィン」や「失神チャレンジ」のように、命を危険にさらすような過激な動画まで登場しています。
家族や周囲の人が止めてもやめられない人も少なくなく、それはすでに一種の“依存状態”に陥っているからだと考えられます。
【解説】組織に潜む「インスタントな承認」の罠
SNSでの「いいね!」は脳に即時的な快感をもたらしますが、これは一時的な刺激に過ぎません。会社組織においても、リーダーが「目立つ成果」や「わかりやすい手柄」だけに反射的な賞賛を与え続けると、部下は「評価されること」そのものが目的化してしまいます。
その結果、SNSの過激動画のように、本質から外れた、周囲の目を引くためだけのパフォーマンスに走りかねないというリスクを孕んでいます。
「タイパ」を超えた、プロセスへの知的な眼差し
現代の部下たちは、情報過多の中で「タイパ」を重視し、即時的な反応を求める傾向にあります。しかし、真の成長や組織の難題解決には、地味で時間の掛かるプロセスが不可欠です。
ここでリーダーに求められるのは、一瞬の「いいね!」を贈ることではありません。相手の苦労や試行錯誤という目に見えにくい背景を「認知的共感」で丁寧に読み解き、「あなたのこのプロセスが、チームの力になっている」と言葉で伝える、重層的なフィードバックです。
依存ではなく「自己肯定感」を育むリーダーのひと言
刺激的な賞賛への「依存」を断ち切り、健全な「自己肯定感」を育むためには、評価の軸を「結果の数値」だけでなく「貢献の質」や「存在そのもの」へと広げる必要があります。 部下が「自分は単なる駒ではなく、唯一無二の存在として理解されている」と実感できたとき、それは一時的な高揚感を超えた、強固な信頼関係(エンゲージメント)へと変わります。
SNSのアルゴリズム的な反応に流されるのではなく、人間味のある「ホンモノの共感」で組織を束ねること。それこそが、現代のリーダーが磨くべき最も価値ある知性と言えるでしょう。
※本稿は、『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。









