◆行き詰まった現状を打破する、思考を“横にずらす”技術
部下が動かない、Z世代との距離感がつかめない……そんな悩みを解決するのが、ソフトバンク「汐留の母」と呼ばれた澤田清恵著『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)だ。生身のリーダーに求められる最強の武器は生成AIには代替できない「コミュ力(共感力)」。単なる同情ではなく、相手の視点を論理的に理解する「認知的共感」の技術を体系化した、悩める上司たちの「読むサプリ」だ。呼吸を合わせる基本から、自身の無意識を言語化する応用、さらには「飲み会の失敗事例」や「エース部下の退職」といった実例に基づく「しくじり」分析まで網羅。表面的なテクニックではなく、心・技・体を整え、信頼で組織を動かすための実践的ノウハウが詰まった決定版!
※本稿は、『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

【一発アウト】成果が出ない部下に「もっと頑張ろう」は禁句…部下を疲弊させない“チャンクラテラル”とは?Photo: Adobe Stock

解決策が行き詰まった時こそ
「横にずらす」思考で突破口を開く

プロジェクトが難航したり、部下が一つのやり方に固執して成果が出なかったりする時。マネージャーとしてどのようなアドバイスをしますか?

「もっと努力しろ」と量を求めたり、「基本に戻れ」と手順を再確認させたりすることも大切ですが、時にはそれが部下を追い詰めてしまうこともあります。そんな閉塞感を打破するために有効なのが、思考の選択肢を横に広げる「チャンクラテラル」という技術です。

「7年前のスーツ」に
こだわる必要はあるのか?

ジムに通うある男性のエピソードをご紹介しましょう。彼は「同窓会で初恋の人に良く見られたい」という目的のために、「7年前に買った高級スーツを着る」という手段にこだわっていました。そのためには、無理をしてでも5kg痩せなければなりません。

しかし、担当したトップトレーナーは、彼の「初恋の人を魅了したい」という真の目的(抽象度の高いゴール)を理解したうえで、あえて別の選択肢を提示しました。

「7年前のスーツは、今の流行とは違うかもしれません。それよりも、今のあなたに似合う新しいスーツを選んで、引き締まった体で着こなすほうが素敵だと思いませんか?」

これが「チャンクラテラル」です。目的(良く見られたい)は維持したまま、手段を「古いスーツに入るための減量」から「今の自分を輝かせる新しいスタイル」へと、横方向(ラテラル)にずらしたのです。

これにより、男性は「減量の苦しみ」から解放され、「新しい自分を作る楽しみ」へと意識が切り替わりました。

優秀なマネージャーは
「手段」に固執しない

ビジネスでも、一つの手段に固執して視野が狭くなっている部下は多いものです。例えば、「テレアポの件数を増やす」ことに必死で疲弊している部下がいたとします。ここで「もっと件数をかけろ」と言うのはナンセンスです。「なぜ電話をするのか?」と目的をチャンクアップした上で、チャンクラテラルの視点を持たせてみましょう。

「顧客との接点を作ることが目的なら、電話以外にも、SNSでの発信や、セミナーの開催という方法もあるんじゃないか?」

このように、目的(抽象度)は変えずに、手段(具体)の選択肢を横に広げてあげるのです。「Aというやり方しかない」と思い込んでいる部下に、「BやCというやり方もあるよ」と気づかせてあげること。それができるのが、真のマネジメント能力です。

思考が行き詰まった時こそ、一度視点を上げ(チャンクアップ)、そして横にずらす(チャンクラテラル)。この柔軟な思考プロセスこそが、停滞したチームにイノベーションを起こす鍵となるでしょう。

※本稿は、『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。