全員一致は安心だが、チャンスを逃しやすい――そんな直感はありませんか。世界一流の組織が選んだのは合意ではなく「一人に委ねる決断」。反対意見を浴びせ、最後は責任を引き受ける設計は、私たちに何を教えてくれるのでしょうか。
楽天グループ代表取締役会長兼社長・三木谷浩史氏をはじめ、Google元会長やZoomの創設者も絶賛する世界的ベストセラー『1兆ドル思考 世界一流の成功をもたらす9原則』をもとに解説します。
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全員一致ではなく、最終判断は一人に委ねる
「私はコンセンサスを信じません」と、スタンフォード大学のイリヤのオフィスで台湾茶を飲みながら、ブライアン・ロバーツはやわらかい声で言う。
ロバーツは、1969年に設立された老舗VCファーム、ベンロックのパートナーだ。
彼はお茶をもう一口飲み、一人のシニアパートナーがスタートアップの社名を気に入らず、案件担当者がそれに反論できなかったせいで、ある機会を逃した話をしてくれた。
「マスコットで好きなスポーツチームを選ぶようなものですよ!」と、彼は笑いながら言った。
そのスタートアップは、ヤフーだ。
ロバーツは、魅力的だが合意を得られない案件を逃さないためにベンロックで設計されたプロセスについて説明した。
ベンロックでは、8人のパートナーが各案件について活発に議論したうえで、最初に案件を持ち込んだパートナーの一存で最終的な投資判断を下すという。
「投資家からはよく『おたくの投資委員会はどのように機能しているのですか』と聞かれます。実のところ、うちには投資委員会はありません。票決さえありません。何もないのです」
代わりに、ベンロックでは、他の全員が反対しても、各パートナーが投資を実行できるようにしている。
他のパートナーは、各自の意見を述べ、リードパートナーの判断に疑問を投げかけて、悪魔の代弁者を演じる。
しかし、最終的な判断は一人のパートナーに委ねられる。
TDKベンチャーズ社長のニコラ・ソバージュは、イリヤのコーポレートVCに関するセッションに参加した後、非常によく似たプロセスを設計した。
「全員が常に同意することなど期待できません」とソバージュは語った。
「それに、私たちは平均を求めるビジネスではなく、極端を求めるビジネスに身を置いています。本当に革新的なアイデアや企業が型どおりのものであったためしはありません。それらを逃さないように、私を含む誰一人として投資責任者が進めたいと考える投資案件に拒否権を行使できないようにしているのです」
パートナーシップの誰もが「ひげそり用カミソリほどつまらないものはない」、「サブスクリプションeコマースは将来性がない」と言っているとしよう。
こうしたやる気をそぐような言葉をよそに、ベンロックのあるパートナーは、ダラー・シェーブ・クラブ(Dollar Shave Club)というひげそり用替刃の定期購入サービスを提供する小さなスタートアップに投資した。
他の多くのVCがその会社への投資を却下したにもかかわらずだ。
ベンロックの型破りな意思決定プロセスがなかったら、ダラー・シェーブ・クラブを支援することはなかったとロバーツは確信している。
その賭けは大当たりし、2016年、ダラー・シェーブ・クラブはユニリーバに10億ドルで買収された。
(本記事は『1兆ドル思考 世界一流の成功をもたらす9原則』から一部を抜粋・編集しています)







