一度決めたら貫く――それが美徳だと思い込んでいませんか。不確実な世界で生き残る鍵は、実は「やめる」「倍賭けする」を選べる柔軟性。コミットよりオプションを残す判断は、あなたの組織にありますか?
楽天グループ代表取締役会長兼社長・三木谷浩史氏をはじめ、Google元会長やZoomの創設者も絶賛する世界的ベストセラー『1兆ドル思考 世界一流の成功をもたらす9原則』をもとに解説します。
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「コミットする」より大切なこと
賢明なVCは一度決めたことを責任を持ってやり遂げる「コミットメント」よりも柔軟性を重視する。
しかし、ほとんどのビジネススクールの学生は授業で柔軟性について学ばない。
従来の金融の概念は、のるかそるかの投資判断を下すことを中心に組み立てられており、選択した行動方針を貫くことを重視している。
正味現在価値や内部収益率、投資収益率といった指標を伴う複数年度のキャッシュフロー予測について考えてみよう。
こうした一般的な評価手法は、途中で明らかになる新情報とは関係なく、企業がプロジェクトに最後まで責任を持って取り組むこと、つまり「コミットする」ことを前提としている。
現代のビジネススクールのカリキュラムでは、柔軟性を学ぶ余地はほとんどない。
経営幹部が受講する授業も、この従来のコミットメント重視の思考法を強化するものだ。
しかし、柔軟性の概念は、実際にはファイナンスや経済学の分野でも知られており、広く研究されている。
柔軟性を表す学術用語は「リアルオプション(real options)」だ。「オプション」とは、意思決定者には将来の行動をとる権利はあるが、義務はないという考え方を指す。
「リアル」とは、オプションの概念が実体のない金融証券だけではなく、実際のプロジェクトやビジネスにも当てはまることを意味する。
ベンチャーマインドセットにとって、リアルオプションは死活問題だ。
成績の芳しくない投資を打ち切ることも、うまくいっている投資先を支援し続けることも、成功には不可欠だからだ。
a16zによるごく初期のインスタグラムへの25万ドルの投資について考えてみよう。
インスタグラムがまだ位置情報共有サービスを提供するバーブンだった頃のことだ。
同社がその次の資金調達ラウンドを実施した際、a16zは競合するピックプリーズ(Picplz)にすでに投資していたこともあって、参加を見送った。
初期投資の300倍を超えるリターンを得たことを人はうらやむだろうが、a16zとしては、さらに稼ぐチャンスを逃したのだ。
たとえ倍賭けをしなくても勝つかもしれないが、勝ちは小さく、リターンはとるに足らないものになるかもしれない。
安全策ばかりとっていたらゲームにとどまることはできない。
リチャード・ハロックは、ポーカーとVCの両方を指しながら、「常にフォールドして(賭けを降りて)いたら、長くは生き残れません」と語った。
(本記事は『1兆ドル思考 世界一流の成功をもたらす9原則』から一部を抜粋・編集しています)







