沖縄県久米島町の無人島生活をはじめ、2年7ヵ月の逃亡の末、2009年11月にようやく身柄を拘束される。自らの逃亡生活を描いた『逮捕されるまで』(幻冬舎)はベストセラーになった。無期懲役となり、カミンスカスと同じ長野刑務所に収監されている。
また17歳の少年Aは2014年3月、埼玉県川口市で祖父と祖母を刺殺し、現金を奪った強盗殺人容疑で逮捕された。浪費癖のある母親から「(祖父母を)殺してでも、金を借りてこい」と迫られた不遇な生い立ちに同情が集まり、当人は最高裁まで量刑を争ったが、2016年6月、一審、二審の懲役15年が確定する。数々の社会派映画を手掛けたプロデューサー河村光庸が企画し、長澤まさみが主演した2020年7月公開の映画『MOTHER マザー』のモデルになった。
刑務所におけるカミンスカス操と
市橋達也の関係性
60歳代後半のカミンスカスに対し、市橋は50歳手前の47歳だ。かつて刑務所内では受刑者に番号が与えられ、教官はもとより受刑者同士のあいだでも姓名で呼び合うことを禁じてきた。だが、人権上問題ありとされ、現在の受刑者たちは互いに姓名で呼ぶそうだ。橘田はカミンスカスが市橋や少年Aに接したときの印象を語る。
「市橋さんは英会話教室に通っていただけあって英語が得意でした。アメリカの作家ジェローム・デイヴィッド・サリンジャーの代表作『ライ麦畑でつかまえて』なんかの話をよくしていましたが、けっこう神経質なところもあって、操さんとはあまり話をしなかったかもしれません。私はカミンスカスさんを操さんと名前で呼んでいましたけれど、市橋さんは『カミンスカスさん』、操さんは『市橋さん』と距離を置いて呼んでいました」
市橋はてきぱきと作業をこなすため、作業を指図する責任者に抜擢されていたという。
カミンスカスは橘田に「刑務所内は夢の世界。ファンタジーだから、娑婆のリアルと同じように暮らせない」と口癖のように話してきた。都心で地上げに奔走している姿など想像できないほど真面目に懲役に務めてきたようだ。橘田はカミンスカス操の知られざる“刑務所なう”を思い起こした。







