むろん刑務所には暴力団幹部もいる。第10工場にも元暴力団組員がいたという。長いあいだ地上げの現場で鎬を削ってきたカミンスカスには、裏社会との付き合いが欠かせなかった。橘田はカミンスカスから反社会勢力とのつながりについても聞かされてきたと
いう。
「第10工場にも指のない高齢の元暴力団幹部がいましたが、現役の暴力団員は働いていなかった。カミンスカスさんにはその手の方との付き合いも少なくなく、話を聞かされました。一度、土地の取引で暴力団組長から2億円借りたものの、契約が決まらず流れそうになって組の若頭に『これで金が入らなかったら、俺はお前を殺さなきゃいけないから、何とかしてくれや』と凄まれたことがあったそうです。4億円を返す約束だったらしい。
けれど、『半年待っているあいだに買った土地の価値が上がり、3億円を乗っけて5億円を返したから助かった』と本人が話していました」
別の刑務所の暴力団員が
カミンスカスを恨んでいた
参考までにいえば、日本の刑務所はアルファベットで分類されている。A級の受刑者は初犯を含む犯罪傾向の進んでいない者、B級は犯罪傾向の進んでいる累犯者や暴力団関係者などが入る。その他外国受刑者のF級、禁固刑のI級、20歳未満の少年が入るJ級、女子刑務所はW級といった具合だ。
『地面師vs.地面師 詐欺師たちの騙し合い』(森 功、講談社)
カミンスカスは、大口の地上げ案件で組関係者からタネ銭の資金を借りて取り引きし、刑務所仲間にも地上げに反目する組から敵対視されて危ない目に遭った経験談を明かしていたという。橘田はかなり際どい内容だけに、服役中にメモしたというノートをめくりながら、事実関係を確認しながらそれを思い出した。
「われわれのいたところは、A級なので現役の組員は入ってこないのですが、いわゆる半グレであったり、組から脱退した元関係者、墨が入っているような人たちは結構見かけました。本人の話とは別に、私自身が仮釈放される前に別の工場に移され、そこで操さんの話題になったこともありました。『10工場にはカミンスカスさんがおるでしょう。実はうちの親分がちょっと怒ってるんだよ』という。山口組弘道会の相当な地位の幹部が、操さんに激怒していたらしい。カネ絡みだという話でした」







