「毎日のラテをやめれば、お金は貯まる」――そんな節約論を一度は聞いたことがあるだろう。だが世界的ベストセラー『アート・オブ・スペンディングマネー』は、むしろ“小さな支出にこだわりすぎる危うさ”を指摘する。今回は本書の視点から、「小さな支出」の落とし穴を掘り下げる。(執筆:坂本実紀、構成:ダイヤモンド社書籍編集局)

「なぜかお金が貯まらない人」の習慣ワースト1Photo: Adobe Stock

お金が貯まらない人ほど、「小さな支出」にこだわりすぎる

なぜかお金が貯まらない人ほど、「小さな支出」にこだわりすぎる傾向があるという。

例えば、毎日のコンビニで買ってしまうコーヒーやカフェラテ、ちょっとした外食の出費……。

小さな支出を積み重ねると将来の大きな資産を失う、という主張は一見もっともらしい。『アート・オブ・スペンディングマネー』では、だれもがこうした無駄な小さな支出をしていることを象徴する小話が登場する。

ある男性が、同僚の女性がラテを飲んでいるのに気づいた。
「どれくらいの頻度でラテを飲んでるの?」と彼が尋ねると、「毎日よ」と同僚は答えた。
「すごい! 会社員になってから30年間、毎日ラテを飲んでるの? 合計したらすごい金額になるぞ。1日1杯ラテを飲めば、年間で約1900ドル。もしそのお金を8パーセントの利回りで投資していれば、今頃25万ドルになっている。フェラーリが1台買える額だ」
同僚は困惑した表情を浮かべ、「あなたはラテを買う?」と男性に尋ねた。
男性は「買わない」と答えた。
「じゃあ、あなたのフェラーリはどこにあるの?」
(『アート・オブ・スペンディングマネー』より)

つまり、ラテを飲んでいる女性もそれを批判した男性も、どちらもフェラーリを買えるくらいの小さな支出を積み重ねているということだ。

しかし、面白いのはここからだ。『アート・オブ・スペンディングマネー』では、「だから小さな支出にこだわろう」とは伝えていない。もちろん小さな支出も大切だが、それにこだわりすぎる“デメリット”にも触れている。

人は、単に大きな問題を無視している場合はそれを意識できる。しかし、小さな問題を意識しだすと、大きな問題を自覚しにくくなる。
(『アート・オブ・スペンディングマネー』より)

つまり、小さな支出ばかりに目を向けていると、もっと大きな支出、つまりより資産形成にダイレクトにつながるクリティカルな支出を軽視しがちになる、ということだ。

あなたが見直すべき「5つの支出」

そのうえで本書では、「大多数の人は、以下に示す一握りの支出項目が支出全体の大きな割合を占めている」として、次の5つの大きな支出を見直すべきだと伝えている。

・学費
・住宅費
・車両費
・健康保険料
・子育て費用

実は私も、もともと貯金0だったが、住宅費、保険、通信費の3つの支出を見直したところ、順調に資産形成ができるようになった。

ラテをやめるかどうかに神経を使い、こうした支出の大部分を占めるお金について深く考えないままでは、いつまでたってもお金は貯まらないのだろう。

(本原稿は、『アート・オブ・スペンディングマネー 1度きりの人生で「お金」をどう使うべきか?』(モーガン・ハウセル著・児島修訳)に関連した書き下ろし記事です)

坂本実紀(さかもと・みき)
WEB&ブックライター
高知県出身の3児の母。出版社勤務を経てフリーライターへ転身し、現在は新潟市を拠点に地域情報メディアのライティングやブックライティングに携わる。恋愛コラムニストとしても活動。