会社を伸ばす社長、ダメにする社長、そのわずかな違いとは何か? 中小企業の経営者から厚い信頼を集める人気コンサルタント小宮一慶氏の最新刊[増補改訂版]経営書の教科書』(ダイヤモンド社)は、その30年の経験から「成功する経営者・リーダーになるための考え方と行動」についてまとめた経営論の集大成となる本です。本連載では同書から抜粋して、経営者としての実力を高めるための「正しい努力」や「正しい信念」とは何かについて、お伝えしていきます。

コスト削減時に気をつけなければいけない、重要ポイントとは?Photo: Adobe Stock

コスト削減時の注意点

 さて、ここまでQPSについて細かく説明してきましたが、実はもう一つ「C」、商品やサービスを提供する側のコストの要素も考えておく必要があります。

 もっともお客さまは、QPSの組み合わせにしか興味がありません。それを踏まえたうえで、コストに関して、いくつか考えなければならない注意点があります。

 例えば、会社が儲からなくなってくると、「コスト削減」が声高に叫ばれ始めます。

 売上高や利益は外部環境に大きく左右されますから、会社を立て直すときは、まずコスト削減から行うのが確実で、常道です。

 特に、緊急に会社を立て直さなければならないときは、コスト削減を最優先に行います。

 しかし、ここで注意しなければならないことがあります。コストの間違った下げ方をして、お客さまが望んでいるQPSの組み合わせを出せなくなると、商品を買ってもらえなくなります。

 コスト削減にも順番があるのです。

 何度も繰り返しますが、お客さまが関心があるのはQPSの組み合わせであり、自社のコストは関係ないのです。コストは、お客さまから見えないところにあります。

 だから「コスト病」になってしまうと、会社はさらにおかしくなっていきます。

 価格を下げなければならないと、コストを下げたがために、クオリティやお客さまが求めるサービスが提供できなくなったら、お客さまは逃げて行ってしまうわけです。

 具体的な話をするために、とある高級住宅街で実際に起こった、ファミリーレストランにまつわる出来事を例に挙げてみましょう。

 その住宅街には、すかいらーくのレストランがありました。しかし、その店をガストに変えたのです。すると、売り上げは落ちてしまいました。なぜなら、飲み物も自分で取りに行かなければいけないといったガストのサービスを、高級住宅街に住む人たちが嫌ったからです。

 結局、その後ガストは閉店しました。このように地域によっても、お客さまから求められるものは違ってくるのです。

 何度も言いますが、大切なのは、お客さまに求められるQPSを提供することです。コスト削減は、そのために必要であればやらなければいけません。

 逆に、お客さまが望まないコスト削減をして、クオリティやサービスを落としてしまうと、お客さまに選んでもらえなくなります。

お客さまが求める
QPSの組み合わせを提供する

 ただし、ライバル会社と比較したとき、自社のコストが相対的に高いとしましょう。

 そうすると、お客さまの求めているQPSの組み合わせを出せなくなる可能性があります。

 例えば、不況になったとき、ライバルが従来と同じクオリティとサービスを維持したまま価格を下げて、商品やサービスを提供することはあります。

 今まで1000円で販売していたジーンズを、880円で売り始めるような場合です。

 そのとき、自社は、「キャリアの長い人が多くて人件費が高いから、価格は下げられません」などと言っていたら、会社は潰れてしまいます。

 このように、あくまでもお客さまが求めているQPSの組み合わせを出さなければならないのだけれど、コストがライバル社と比べて高すぎたら、お客さまが求めているQPSを出せなくなる可能性があるわけです。

 では、そのような場合、どうすればいいのでしょうか?

 まずコスト削減をするか、あるいは、資金的に余裕があるのなら、戦略を変えて、強みを活かせて、かつライバルと全く違うクオリティ、サービスを提供するようにQPSの組み合わせを変えてしまうのです。

 そうしないと勝てません。

価値があれば、高くても買ってくれる

 お客さまから見て価値があれば、高くても買ってくれるのです。

 とらやの羊羹やロレックスなどが、その例です。

 ブランドはもちろん、品質のうえでもお客さまに価値があると認められています。そういったQPSの組み合わせを作り出せるかどうかなのです。

 このように、「コスト病」にかかってはいけませんが、コストをある程度に抑えておかないと、ライバルに勝てなくなる可能性もあるということを、忘れてはいけません。

 一方、従来の自社のイメージの分析も必要です。

 比較的安価な食事などを提供していたさくら水産が、仕入れの上昇などによる値上げで、店舗数の大幅削減を行わざるをえない状況になりました。イメージも含めてお客さまが自社に求めるQPSの見極めが必要です。

(本稿は[増補改訂版]経営者の教科書 成功するリーダーになるための考え方と行動の一部を抜粋・編集したものです)

小宮一慶(こみや・かずよし)
株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO
10数社の非常勤取締役や監査役、顧問も務める。
1957年大阪府堺市生まれ。京都大学法学部を卒業し、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。在職中の84年から2年間、米ダートマス大学タック経営大学院に留学し、MBA取得。帰国後、同行で経営戦略情報システムやM&Aに携わったのち、91年、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の93年初夏には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。
94年5月からは日本福祉サービス(現セントケア・ホールディング)企画部長として在宅介護の問題に取り組む。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。2014年より、名古屋大学客員教授。
著書に『社長の教科書』『経営者の教科書』『社長の成功習慣』(以上、ダイヤモンド社)、『どんな時代もサバイバルする会社の「社長力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『「1秒!」で財務諸表を読む方法』『図解キャッシュフロー経営』(以上、東洋経済新報社)、『図解「ROEって何?」という人のための経営指標の教科書』『図解「PERって何?」という人のための投資指標の教科書』(以上、PHP研究所)等がある。著書は160冊以上。累計発行部数約405万部。