「3月15日まで」は大間違い…相続人を直撃する“確定申告の罠”とは?
大切な人を亡くした後、残された家族には、膨大な量の手続が待っています。しかも「いつかやろう」と放置すると、過料(行政罰)が生じるケースもあり、要注意です。本連載の著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。相続の相談実績は5000人を超え、現場を知り尽くしたプロフェッショナルです。このたび、最新の法改正に合わせた『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』が刊行されます。本書から一部を抜粋し、ご紹介します。
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「確定申告の罠」に注意! 延滞税が発生することも!
本日は「相続と確定申告」についてお話しします。年末年始、相続について家族で話し合った方も多いかと思います。ぜひ参考にしてください。
故人が生前中に得ていた収入については、相続人が代わりに確定申告をしなければなりません。これを「準確定申告」といいます。
数ある相続手続の中でも準確定申告は期限が短く、気づかぬうちに期限を過ぎてしまい、延滞税等のペナルティが発生してしまうことがあります。準確定申告の基本的な流れや必要書類について解説します。
準確定申告とは何か?
準確定申告とは「故人の確定申告」を指します。期限は亡くなったことを知った日の翌日から4か月以内で、相続人はこの日までに申告と納税を済ませる必要があります。提出先は故人の住所を管轄する税務署です。
ここで「確定申告は、3月15日までにすればいいんじゃないの?」と思われる方もいるかもしれません。確かに一般的な所得税の確定申告は、1月1日から12月31日までの1年分を計算し翌年の3月15日までにすることになっています。
しかし、年の途中で亡くなった場合は、1月1日から亡くなる日までの分を計算し、亡くなってから4か月以内に申告しなければいけないのです。
例えば、7月1日に亡くなった場合には、期限は11月1日になります。「亡くなった日の4か月後の同じ日」と覚えてください。では、令和8年3月1日に亡くなった場合はどうなるでしょうか。この場合、「令和7年1月1日から12月31日」までの分と「令和8年1月1日から3月1日」までの分の2つの確定申告を7月1日までに行う必要があります。
どれくらいの人が必要?
ここまで聞いて「故人の確定申告が必要」、さらに「期限はたった4か月しかない」と焦ってしまう方も多いかと思います。しかしご安心ください。実は準確定申告は必要がないか、もしくは申告したとしても税金が返ってくるケースが多いです。
最も多くの人が当てはまるケースとして、「生前に得ていた収入は年金だけだった人」の場合を考えていきましょう。そもそも、「①年金収入400万円以下、②その他の所得20万円以下」という2つの条件を満たす人であれば、準確定申告は任意です。
確定申告をして税金を返してもらう手続のことを「還付申告」といいます。還付申告は通常の確定申告書を使い、作成の手順等も同じで、還付金の振込口座を記載するのを忘れないようにしましょう。還付申告の期限は、亡くなった年の翌年1月1日から5年間になりますので、ゆっくり準備することができます。
ふるさと納税や医療費控除は?
年金には少額ですが源泉徴収されている所得税がありますので、医療費控除などの制度を使って確定申告をすれば、その分の還付を受けられる可能性があります。申告書を作成する手間と、還付される金額の見合いで申告するかどうかを検討しましょう。
※生前中にふるさと納税をしていた場合には、準確定申告で控除を受けることが可能です。
また、株式や投資信託で運用をしていた方も、配当金について源泉徴収されていた所得税が還付される可能性がありますので、そういった方は積極的に還付申告をするべきか検討しましょう。なお、還付金を受け取った場合には、その還付金は相続税の課税対象になりますので、申告漏れにはお気をつけください。
不動産所得に注意!
では逆に、準確定申告が必要になるのは、どのような方でしょうか?
私がこれまで実務にあたってきた中で、最も多かったのは賃貸不動産をお持ちの方です。賃貸不動産をお持ちで不動産所得が20万円を超えた場合は、準確定申告が必要です。不動産所得とは、不動産収入から固定資産税や修繕費、減価償却費などの費用を差し引いた後の金額を指します。
準確定申告は、亡くなった年の1月1日~亡くなった日までの全所得で計算しますので、例えば1月など年初めで亡くなった場合は、所得が少なく申告不要の可能性もあります。他にも、準確定申告が必要になる場合を以下にまとめました。
まとめ 準確定申告が必要なケース
○自営業を営んでいて事業所得が20万円を超えた場合(事業所得とは、売上から経費等を差し引いた後の金額を指します)
○不動産を売却して譲渡所得(じょうとしょとく)が20万円を超えた場合
○有価証券を売却して20万円を超えた儲けが出た場合(特定口座で源泉徴収されている場合は除かれます)
○2か所以上の会社から給料をもらっていた場合
○公的年金等の年金収入が400万円を超えた場合
○会社からの給与収入が2000万円を超えた場合
○給与所得、公的年金による雑所得、退職所得以外の所得が20万円を超えた場合
(本原稿は『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』の一部抜粋・加筆を行ったものです)








