八雲、日本人になる

 そんな疑問や不満は、司之介の嫌味で解消か。

「よそ者なのに、跡取りのことには口を出すんですね」

 でもここもちょっとヘン。トキが松野を出たら、司之介はまた養子をもらえばいいというが、籍にまだ銀二郎(寛一郎)が入っているのだ。銀二郎の法的な尊厳がないがしろではないか。銀二郎が結婚するとき、どうするのだろう。

 しかも、戸籍から勘右衛門の籍が外れているのがわかるのではないか? ここはなんとなく無理やりな感じがするのだが……。これも明治と令和の戸籍制度の違いであろうか。

 ここはそういうおもしろコーナーでも、もやもやコーナーでもない。とてもとても重要な、ヘブンの日本名が付けられるシーンにつながるところなのだ。

「ラストおじじさま」こと勘右衛門は、ヘブンに「雨清水八雲」と命名する。例の日本最古の和歌と言われる古事記に載った「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を」からとった縁起のよさそうな名前。

「素晴らしい、私! 日本人になったの気持ち」

 従来であればここを手厚く描くであろうところ、その前のわちゃわちゃが手厚いのが『ばけばけ』らしい。

 そして、朝方、ヘブンはなつかしい旅館で休んでいると、音で目を覚ます。

 米をつく音だ。ヘブンは起き上がり、外に出る。

 活気にあふれた物売りの声。寺の鐘の音。

 あのとき、あんなに感動した幻想的とも思えた光景。

 ところが、ヘブンは焦りだす。

「NO」を連発し、「どうしてだ」と混乱しながら、橋を登る。

「何をうろたえているんですか」と声がして、見ればそこに――。

 錦織が。

 この錦織は実体? それとも幻?

 今週、いろんな大事なことが描かれているが、最後に錦織のことで頭がいっぱいになる構成が徹底されている。

吉沢亮の「変わり果てた姿」に高石あかりが放ったセリフがいい!思わず唸らされた会話劇〈ばけばけ第114回〉
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