吉沢亮の「変わり果てた姿」に高石あかりが放ったセリフがいい!思わず唸らされた会話劇〈ばけばけ第114回〉

勘右衛門、松野家から籍を抜いていた

 こういう会話がうまい。トキは錦織の姿を見て、彼の健康がかなりよくないと悟っただろうが、遠慮がちに「お達者ですか」としか聞けない。「まあ今日は達者なほう」という返しは、今日以外は相当悪いことを婉曲(えんきょく)に物語る。

 錦織はトキが自分に会いに来た理由を薄々わかっている。

「あの話なら」「あの話だよな」とまた「あの」が出るが、錦織の体調があまりに悪そうなのと「あの話」を断ってしまうものだから、「あの」「あの」トークは楽しくはない。

 力を貸してくれない理由は、やはりヘブンのことを怒っているのかとトキ。怒ってなどいない、と錦織が言うと、

「なして、知事にかけ合ってくださらないんですか?」

 トキは迫る。なんか失礼だよ。トキ。

 錦織はトキの無礼に怒ることなく(そんな気力もないだろう)、ヘブンは日本人にならないほうがよいと思っていると応え、「君なら少しはわかってくれると思っていたが」と捨てセリフを吐いて去っていく。

 残されたトキとサワ。サワは「君ならわかってくれると思っていた」の意味がわからない。

 トキは「わかる」と言ったり「わからん」と言ったりする。トキはほんとにわかっているのだろうか。

 ここでトキの心理を推理。ヘブンが日本人にならないほうがいいと言うのは、近代化していくいっぽうのいまの日本人に価値がないと思っているから。あるいは、異邦人の視点で日本を見た書物の評価が高かったのだから、帰化するとその魅力の前提や価値が崩壊してしまうことを心配しているのか。

 ついに司之介(岡部たかし)とフミ(池脇千鶴)、トキとヘブンが勘右衛門(小日向文世)に会いに来た。勘太も連れて。

 トキは雨清水家の戸籍に戻ることの許可をもらいに来たのだが、当然ながら勘右衛門はいい顔をしない。

「これで松野家は末永く安泰。いつあの世へいっても案ずることはない。そげに思っておったら……」

 勘右衛門が渋っていると、タツ(朝加真由美)がとりなす。

「それぐらいで、もうよそもんなんですけん」

 よそもの? 驚いたことに勘右衛門は勝手に上野家の籍に入って、上野勘右衛門になっていた。

 この展開、なんとなく釈然としないものがある。だが勘右衛門はペリー(ヘブン)に仕送りをもらっていることを松江の人たちに知られるとトキによくないと考えたようなのだ。トキたちが松江に連絡していなかったのも同じ理由だろうか。