日本経済へ打撃及ぼす
電力料金値上げ

きっかわ・たけお
1951年生まれ。和歌山県出身。1975年東京大学経済学部卒業。1983年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。同年青山学院大学経営学部専任講師。1987年同大学助教授、その間ハーバード大学ビジネススクール 客員研究員等を務める。1993年東京大学社会科学研究所助教授。1996年同大学教授。経済学博士。2007年より現職。『東京電力 失敗の本質』(東洋経済新報社)、『電力改革』(講談社)など著書多数。総合資源エネルギー調査会基本政策分科会委員。
Photo by Naoyoshi Goto

 2013年の日本経済にとっての大きなリスク要因に、電力料金の値上げ問題がある。3.11後の原子力発電所の運転停止にともなう火力発電用燃料コストの急膨張によって、全国10社の電力会社中5~6社が料金引き上げを迫られているのだ。

 もう一つ強調しておきたい点は、このままでは大幅な電力料金の値上げが長期にわたって避けられないことである。昨年、総合資源エネルギー調査会基本問題委員会は、2030年のわが国における原子力発電の依存度について、「ゼロシナリオ」「15%シナリオ」「20~25%シナリオ」「決定しないシナリオ」という四つの案をまとめた。

 あわせて基本問題委員会が発表したコスト等検証委員会の発電コストに関するデータにもとづく試算によれば、2030年に電力料金は、2010年度の水準と比べて、「原発ゼロシナリオ」では99~102%、「原発15%シナリオ」では71%、「原発20~25%シナリオ」では54~64%、それぞれ上昇することになる(「決定しないシナリオ」については試算が不可能)。

 このような料金水準の上昇が生じるのは、コスト等検証委員会が主要な火力発電用燃料であるLNG(液化天然ガス)価格を原油価格とリンクさせて計算し(いわゆる「油価リンク」)、その基になる原油価格が趨勢的に高騰すると見込んでいるためである。

 大幅な電力料金の上昇は、国内製造業の競争力低下、ひいては生産縮小に直結する。それは、産業の国内基盤を根底的に脅かし、日本経済に甚大な打撃を及ぼすことになりかねない。