この「水揚げ義務」では、その義務が免除されるもの(投棄してよいもの)として、(1)絶滅危惧種などそもそも漁獲が禁止されている種、(2)捕食動物によって損傷を受けた個体、(3)投棄されても「高い生残率」を示す種、(4)漁獲の際の魚種選択が困難で、その処理に不均衡なほどのコストがかかる場合の投棄(上限を漁獲量の5%までとしており、「デ・ミニミス免除」と呼ばれています)(「デ・ミニミス」とはラテン語で「些細なこと」の意)の4つのケースが許されており、これを大西洋におけるTAC種と地中海における漁獲サイズの規制種に適用することとして、2015年から2019年の間、漁業と魚種ごとに段階的に導入されていきました。

 この「水揚げ義務」がどの程度の効果を持つのか、EUはその実施状況を報告するよう各国に求めていますが、現在のところ、加盟国の中には報告を行わない国もあってその効果のほどはいまだ結論が出ていない状況です。

「沖での漁獲量」と「港での水揚げ量」
両者には天と地ほどの違いがある

 実は、この投棄の問題をEUのケースで勉強していた私が、上記の施策の展開を知る過程で心の底から驚いたことがありました。それが「EUでは漁獲量の管理も資源の評価もこれまで『水揚げ量』を基に行われてきた」という事実です。

 当初、EU関係の文献を読んでいた私は、例えば「水揚げ義務によって共通漁業政策は史上初めて、水揚げされた漁獲物から廃棄された漁獲物を含むすべての漁獲物に焦点を移すことになった」などという文章に触れても、きっとこれは単に理念的なことを指していて、TAC(編集部注/Total Allowable Catch:総漁獲可能量)の設定やクォータの配分などは、当然、沖で「漁獲される漁獲量」を基準に行われているものだと信じ込んでいました。

 しかし、文献を読み進むにつれ、EUで各国に配分されていたクォータは、実は沖での漁獲量ではなく「港に水揚げされた水揚量(landed catches)」に該当するものであることがわかったのです。