移動に価値を見出す
カリスマ成功者たち

 実業家の堀江貴文は、現在は業界の壁を軽やかに飛び越える「越境者」が求められる時代にあると言う。そして、こうした時代には、いくつもの異なることを同時にこなせる「多動力」が最も重要な能力であると主張する。

 作家でお笑い芸人の西野亮廣は、「移動に投資したときに人は成長する」と言う。ある日のブログでは、「以前、20代の社員に『移動距離がバグってるヤツが勝つ』と言ったら、『分かりました!』と返ってきて、次の日の朝には金沢に飛んでて、そして、そこで得たことを、今、自分達の事業の1つに落とし込んでいます」と、すぐに遠くまで移動したことで事業へと結びついたエピソードを良い例として紹介している。

 作家で編集者の長倉顕太が2024年に書いた『移動する人はうまくいく』は、移動強者=成功者を全面に押し出したことでヒットした。ある業界の成功者でありトップランナーであると自称する著者は、「移動力」という考え方を提唱する。それは、環境を切り替える力であり、環境を変えることで、行動が変わり、人生が変わり、成功する力だという。

 他にも、「人生は移動距離で決まる」「学力も社会での稼ぎも、その人間の移動距離で決まる」「ヤンキーがイマイチ伸びないのは移動距離が少ないからで、投資して移動させることでヤンキーも高校生も伸びる」なんて、言い切る経営者や実業家もいる。

 移動することで成功する、移動することで成長する、移動することで人生が変わる――成功者と言われる人の中には、類似の主張をする人は多くいる。

 さらに、『世界標準の経営理論』などで知られる経営学者の入山章栄も、インタビューの中で「発想力は移動距離に比例する」と語っている。異質な知と知を結びつけるのがイノベーションであり、そのためには普段接していないものを見つけ、そこから知見を得なければならない。入山によれば、発想力に優れた人はさまざまなイベントに出たり、遠くに旅行に行ったりしており、発想力はその人の移動距離に比例するのかもしれないというわけである(日経ビジネススクール:2022)。