ネットワーク資本を考え出したジョン・アーリは、著書『モビリティーズ』の中で、「社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)」という考え方との関連でネットワーク資本を説明する。それは、つながりの効用とでも言えるものである。アーリによれば、社会関係資本は、定住主義、つまりは移動がない地域社会やコミュニティを前提としており、強く濃いつながりと近しいコミュニティを前提とする点で今の時代に合っていない部分がある。長距離移動が広く発達し、さまざまな社会関係がますますグローバル化している状況があまり踏まえられていないというわけである。
『移動と階級』(伊藤将人、講談社)
では、なぜここでネットワーク資本に言及したのか。それは、高い水準でネットワーク資本を有する人々は、高いレベルで地理的な移動を経験しており、興味深いことに、他の人にもかなりの移動性の高さを要求するからである(Elliot and Urry:2010)。つまり、社会的に成功者であると言われたり、そのことを自負したりする人の中には、「移動=成功」を他者に押し付けたがる人がいるのだ。この理由が、ネットワーク資本から説明できる。
インターネットが普及したことでオフライン・オンラインを含む多様な移動が自身のつながりを拡張し、蓄積できる時代に成功したからこそ、「移動=成功」を押し付ける成功者は、ネットワーク資本を重要なものと認識し、それを口にするわけである。
さらに、ネットワーク資本は、成功者をさらに成功者にし、貧者をより貧者にする、そういった社会的不平等を再生産するメカニズムも有している。このことは、世界で最も裕福で移動性の高い300人の人々が、最も貧しく移動性の低い30億人と同じ収入を得ていることからもわかるだろう(Elliot and Urry:2010)。移動資本とネットワーク資本によって富めるものはどんどん富み、格差が拡大していくわけである。







