駅のホームで電車を待つ女子高生写真はイメージです Photo:PIXTA

日々仕事に忙殺されてきた結果、現代人は人生の後半に差し掛かっても、生き急ぐスピードをなかなか緩められない。そんななか、草花を見るために旅の途中で寄り道を重ねてきた雑草研究家の筆者は、58歳を迎えるタイミングで老後を楽しく生きるための真理に気づいたという。そのヒントは、意外にも「電車」にあった。※本稿は、静岡大学教授の稲垣栄洋『私たちはどう老いるか』(小学館)の一部を抜粋・編集したものです。

人生後半は前を見ても
死しか見えない

 年を取っても前向きに生きなければならないと言われる。

 そうだろうか。

 人生後半は前を見ても、死しか見えない。

 それよりも、今を楽しんだり、場合によっては、過去を振り返って生きてみても良いのではないだろうか。私はそう思う。

 人はこの世に生まれ、あの世に帰っていく。もし、往復切符を持っているとしたら、私はもう帰りの切符で旅行をしているのだ。

 学生の頃は、お金はなかったが、とにかく、時間だけはあった。

 お昼過ぎまで寝ていることも当たり前だったし、目が覚めても、1日ゴロゴロしていることもあった。徹夜してみたり、眠たいときには昼寝してみたりを繰り返しているうちに、目が覚めたとき、朝なのか夕方なのかわからなくなることもしばしばだった。

 大学の夏休みは2カ月もあった。

 本当に時間だけはたっぷりとあった。

 そんな学生の頃、私は「鈍行乗り放題」の切符で出掛けるのが好きだった。

 新幹線に乗れば、数時間で行けるようなところを、鈍行電車に乗って、1日掛けて旅をするのだ。

 鈍行電車に乗るときには、バッグの中に必ず詩集を2冊ばかり忍ばせていた。