ドイツのベルリン州立図書館PHOTO: MARZENA SKUBATZ FOR WSJ
今年建国250周年を迎える米国は、移民の国から「出移民」の国になりつつあるのか。
米国は昨年、間違いなく大恐慌以来起きていなかった事態を経験した。米国に来る移民の数よりも、国外に出て行く米国人の方が多かったのだ。米トランプ政権はこの「大脱出」(移民の純流出)を、強制送還の推進や新規ビザ(査証)発給制限といった公約を実行した成果だと自賛する。だが、移民取り締まりが波乱の展開となる裏側で、あまり気づかれない巻き戻しが起きている。記録的な数の米国市民が母国を離れ、物価が手頃で安全な場所に、自身や家族の生活拠点を移しているのだ。
米国はアイゼンハワー政権以来、国外に移住する市民の数について包括的な統計を取っていない。だが50カ国以上から集めた居住許可や外国での住宅購入、大学入学者数などのデータを分析すると、米国人は異例の規模で行動を起こしていることが分かる。総勢数百万人の国外移住者がすでに現地で学び、テレワークを行い、引退生活を送っている。
一部の市民にとって、新たな「アメリカンドリーム」は、もう米国に住まないことだ。
ポルトガルの首都リスボンの石畳の通りでは、多くの米国人が集合住宅を買いあさっているため、直近の移住者はポルトガル語ではなく英語ばかりが聞こえてくると不満を漏らすほどだ。不動産業者によると、アイルランドの首都ダブリンの最先端地区グランド・カナル・ドックでは、住民の15人に1人が米国生まれとなっている。これは19世紀のジャガイモ飢饉(ききん)の際、米国へ渡ったアイルランド人移民が現地で占めた割合よりも高い。バリ島、コロンビア、タイなどでは、ドル建ての給料を得る米国人リモートワーカーの急増で住宅需給が圧迫され、「地域の高級化(ジェントリフィケーション)」に反対する地元住民の抗議デモが相次いでいる。
また10万人以上の若者が、より安い費用で大学の学位を取得するため、外国の大学に進学している。メキシコ国境の向こうで急増する老人介護施設には、低コストの介護を求める高齢の米国人が集まっている。







