出世する上司は
部下にも謙遜
案の定、小谷くんは仕事で大きなミスをしてしまい、塚田さんに徹底的に追い込まれていた。そこで助け舟を出したのが、同じチームにいた係長の加藤さん(仮名)だ。
加藤さんは、それまで突出した業績を挙げていたわけではないが、実直な仕事ぶりと真面目な性格が評価され、社内や取引先の信用も厚い人物。野球選手に例えるなら、大谷のようなホームランバッターではなく、地道にヒットを積み重ね、守備も堅実なタイプだった。
見かねた加藤さんは、小谷くんがトラブった相手先に一緒に出向いて解決策を提示し、無事に処理しただけでなく、新たな発注まで取り付けた。しかも、その成果を小谷くんの実績として計上したのである。
もともと加藤さんに一目置いていた私は、社内の飲み会で一緒になった際に、このときのことを絶賛した。すると加藤さんは、「私にできることなんか、相手先で謝り倒すことくらいですからね。それに、彼ほど才能のある子には敵わない。数年後には上司になっててもおかしくないから、今から恩を売っただけですよ」と笑いながら謙遜する。
自慢げに小谷くんを「コントロールできる」と言った塚田さんとは対照的だ。
その後の加藤さんは、自分を慕う小谷くんの才能をうまく伸ばして会社全体の売り上げアップに貢献。数年後には部内のナンバー2にまで出世していた。
一方の塚田さんは花形の部署を去り、いわゆる窓際でこんな自慢話をしていたようだ。
「俺が小谷を鍛えて育てたんだぜ」
才能よりも
「誠実さ」が武器になる
“人生の指標”となる言葉の数々を収録している本、『人生は期待ゼロがうまくいく』の中には、「才能よりも『誠実さ』を武器にする」という項目がある。
1.自分のやることを淡々とこなす
自分の役割に責任を持ち、黙々とベストを尽くす人は、たとえすぐに成果が出なくても必ず報われる。
――『人生は期待ゼロがうまくいく』(p.234)
著者のキム・ダスル氏は、こう結論づけている。
――『人生は期待ゼロがうまくいく』(p.235)
大谷翔平のようなケースは稀だが、どんな仕事をしていても脅威に感じるほど優秀な部下や後輩に出会うことはあるはずだ。そのとき、自分はどう立ち回るべきか。
『人生は期待ゼロがうまくいく』には、他にもヒントになる言葉がいくつもあるので、手にとって損はない。
(本記事は『人生は期待ゼロがうまくいく』の発売を記念した書下ろしエッセイです)
大学卒業後、複数の出版社や不動産会社での社員を経てフリーライターとして独立。週刊誌、月刊誌、WEBメディアなどで記者、編集者を経験した。事件、芸能、スポーツ、サブカルチャーまで幅広く取材に携わり、のちに新聞やテレビでも大きな話題になったスクープをモノにしたこともある。





