古今東西を問わず大切なリーダーの資質
アレクサンドル3世は、一介の民間企業の経営者であったウィッテを引き上げ、ロシアを経済大国へ導くという大役を委ねました。民主主義が浸透しつつあった当時の西ヨーロッパ諸国とは異なり、強固な貴族制度が根付いていたロシアにおいて、平民出身のウィッテを重用するのは並大抵のことではありません。これは、君主の強いリーダーシップがあってこその決断だったと言えるでしょう。
「適切な人物を適切な地位につける」ことは、いつの時代もリーダーにとって不可欠な資質です。日本に目を向ければ、戦国時代に「天下布武」を掲げた織田信長が、羽柴(豊臣)秀吉のような身分の低い人物であっても、その才能を認めて積極的に登用したエピソードは広く知られています。
強みを活かす重要な資質「真摯さ」
現代のマネジメントに視点を移すと、著名な経営学者であるピーター・ドラッカー(1909~2005年)は、著書『マネジメント』のなかで、「人の強みを活かすこと」こそがマネージャー(リーダー)の極めて重要な役割であると説いています。そして、そうしたリーダーに求められる最大の資質として「真摯さ(まじめで誠実であること)」を挙げ、次のような警句を残しました。
「強みよりも弱みに目を向ける者をマネージャーに任命してはならない。できないことに気づいても、できることに目のいかない者は、やがて組織の精神を低下させる」
弱みよりも強み、できないことよりもできることに目を向ける
アレクサンドル3世もまた、ウィッテの「強引すぎる」という弱さを十分に認識しつつも、それ以上に「経済運営における圧倒的な有能さ」という強みを高く評価したからこそ、国の命運を握る経済政策を委ねたのではないでしょうか。
組織に確かな成果をもたらし、リーダーとしての役割を全うするためには、メンバーの「弱み」よりも「強み」に、そして「できないこと」よりも「できること」にしっかりと目を向けることが何よりも大切なのです。
※本稿は『リーダーは世界史に学べ』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。















