「秦の滅亡に学ぶ」…制度を変えても“空気”が変わらなければ、改革は失敗する
【悩んだら歴史に相談せよ!】好評を博した『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)の著者で、歴史に精通した経営コンサルタントが、今度は舞台を世界へと広げた。新刊『リーダーは世界史に学べ』(ダイヤモンド社)では、チャーチル、ナポレオン、ガンディー、孔明、ダ・ヴィンチなど、世界史に名を刻む35人の言葉を手がかりに、現代のビジネスリーダーが身につけるべき「決断力」「洞察力」「育成力」「人間力」「健康力」と5つの力を磨く方法を解説。監修は、世界史研究の第一人者である東京大学・羽田 正名誉教授。最新の「グローバル・ヒストリー」の視点を踏まえ、従来の枠にとらわれないリーダー像を提示する。どのエピソードも数分で読める構成ながら、「正論が通じない相手への対応法」「部下の才能を見抜き、育てる術」「孤立したときに持つべき覚悟」など、現場で直面する課題に直結する解決策が満載。まるで歴史上の偉人たちが直接語りかけてくるかのような実用性と説得力にあふれた“リーダーのための知恵の宝庫”だ。
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秦の統一を可能にした「法家の改革」
――血縁を断ち、国家をつくる
歴史に学ぶ「急進的改革」の罠
統一からわずか15年で滅亡してしまった秦の失敗と同じように、新制度が既存の価値観と矛盾していれば、必ず摩擦が起きます。したがって、制度改革を成功させるには、次のような「考え方の転換プロセス」を設ける必要があります。
成功への鍵は「考え方」のアップデート
①なぜ改革が必要なのかを丁寧に説明する
個人主義のメリットと限界、協力型組織の必要性を論理的に伝える。
②新たな価値観に共感してもらうエピソードを共有する
「チームで成果を出したことで、全員に好影響があった」などの実例を積極的に共有する。
③評価制度の移行期を段階的に設ける
たとえば、個人成果とチーム貢献を併用する制度にして、価値観の転換を「移行期間」で支える。
④リーダー自身が行動で示す
チーム貢献を評価するリーダーの姿勢が、組織における新たな基準を体現するようになる。
本当に変えるべきは「制度」か「文化」か
変えるべきなのは、「制度」よりも「空気」だったりします。制度を変えることは比較的簡単です。しかし、それを文化として根づかせるには、考え方を変える「時間」と「対話」が必要です。
秦のように、制度だけを急速に押しつければ、旧来の構造が逆に反発を強め、組織の内側から崩れていく危険があります。



