「仕事が遅い部下がいてイライラする」「不本意な異動を命じられた」「かつての部下が上司になってしまった」――経営者、管理職、チームリーダー、アルバイトのバイトリーダーまで、組織を動かす立場の人間は、悩みが尽きない……。そんなときこそ頭がいい人は、「歴史」に解決策を求める。【人】【モノ】【お金】【情報】【目標】【健康】とテーマ別で、歴史上の人物の言葉をベースに、わかりやすく現代ビジネスの諸問題を解決する話題の書『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、伊達政宗、島津斉彬など、歴史上の人物26人の「成功と失敗の本質」を説く。「基本ストイックだが、酒だけはやめられなかった……」(上杉謙信)といったリアルな人間性にも迫りつつ、マネジメントに絶対活きる「歴史の教訓」を学ぶ。
※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

自己チューで短気な経営コンサルタントが歴史に学んで改心したことPhoto: Adobe Stock

自分の好みに引っ張られがち

徳川家康は「人のよし悪しを見るときに、どうかすると自分の好みに引っ張られて、自分が好きなほうをよしとするものだ」といいました。

私自身も、かつては自分の好みに引っ張られて、好感をもてない人に対しては、悪いところばかりが目について仕方ありませんでした。

自分でいうのもなんですが、私は外見からはおおらかで穏やかそうに見られることが多いのですが、じつはちょっと短気なところがあり、家族や付き合いの長い人からは、よく指摘されることがあります。

自分の考えに固執しても
ストレスが増幅するだけ

そんな性格もあってか、好感をもてない人の悪い面がいったん気になってしまうと、イライラしてそのことで頭がいっぱいになることさえありました。イライラが抑えられず、相手によっては、辛く当たることもあったのです。

西郷隆盛が薩摩藩主・島津久光を「地五郎(薩摩弁で田舎者)」と揶揄したように、「そんなことも知らないんですか」などと周囲の人を見下すようなことも過去にはありました。

さらに、織田信長ほど過激ではありませんが、深夜残業や休日勤務も苦にならない私は、同僚や部下にも同じような働き方を求めたこともありました。

もちろん、そんな態度や言動をとっても、何もよいことはありませんでした。むしろストレスを増幅させてしまいました。

自分の負の面を認められるか?

イライラして部下に辛く当たっても、素直に意見を聞き入れて、動いてくれることはありません。それどころか、潮が引いていくように、部下の心が私から離れていくことがよくわかりました。

そんな苦い経験をするうちに、自己中心的だった自分自身を客観視できるようになったのです。

自分の好みに引っ張られるのも、イライラして辛く当たるのも、自分と同じような働き方を求めるのも、すべて自己中心的で独善的な考え方に執着していたから。

そして、そんな自分にうすうす気づいていながらも、自分の負の面を認められなかったのです。

自分の問題を直視できなければ
人間的に成長しない

そんな自分の姿が、西郷隆盛や織田信長の負の面と重なったのです。

歴史学者・家近良樹さんの著作『西郷隆盛 維新150年目の真実』を読んで、西郷が島津を「地五郎」呼ばわりしたことも災いして遠島になった際、自分のこれまでを反省し、人格者として磨かれたと知り、西郷の心境が自分自身に重なりました。

うまくいかないことについて、自分に問題がないかを考えなければ、人間的に成長しないと気づかされたのです。

歴史に学ぶ醍醐味とは?

いまでも、そういう傾向がまったくないとは断言できませんが、以前よりは自分を客観視できるようになり、ちょっと性格が合わない人でも、心を落ち着かせて真摯に耳を傾けられるようになったと思っています。

そのように変わったのは、相手の立場や心情を考えるようになったこと、自分が完璧なわけではないと悟るようになったこと、それに「役を演じる」という意識が芽生え、思ったことを直言しなくなったことも理由としてあります。

歴史上の偉人であっても、私と同様、不完全な面があります。そして、不完全なところからどのように成長したのかに学ぶとともに、不完全なままだったことが招いた失敗を反面教師にすることが、歴史に学ぶ醍醐味だと感じます。

※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。