「頭で理解する」と
「体で理解する」の大きな違い

「あそこの出身者ならぜひ採用したい」と思われる、転職市場で高く評価される会社があります。たとえば、リクルート出身の営業人材。これは目標達成への執着心が並大抵ではなく、す。営業人材としての基本が叩き込まれていることが、転職市場で広く認識されているからです。

 彼らの執着心は最初から身に付いていたわけではありません。

 職場の全員が目標達成に邁進する中、達成できなければ上司や先輩から成果を詰められ、立場を失いかねないという極めて厳しい状況の中で必死に仕事へ取り組んだ結果、体で覚えた感覚的なものです。

「目標達成は営業の使命」と誰もが頭ではわかっていますが、体でわかっている人とは大きな違いがあります。

 この「体で理解する」という部分は、やはり自分の至らなさを突き付けられ、上司や先輩にきちんと指導され、仕事の進め方や姿勢を学習するプロセスが必要です。

 新人時代に厳しく指導されるのは、のんびり過ごしていた学生が価値を生み出すビジネスパーソンへ生まれ変わるための儀式だと私は思います。

 この儀式を経ていない若手は、いわば「生まれ変わる機会」を奪われた状態にあります。だからこそ基本動作ができていない部下がいれば、上司は学習し直す機会を与え、生まれ変わってもらう必要があります。

安心感を与えなければ
素直に学ぶことはできない

 では、どのように指導していけばよいでしょうか。学ぶ側が指導する側に全幅の信頼を置けるような関係づくりが、その第一歩になります。

 それには「何があっても私が君を守る。だから、私の言う通りにやってみなさい。最後は私が責任を取るから」と伝えることです。部下が安心できる関係がないと、素直に学ぶことはできません。

 部下が安心して働ける職場のセーフティネットとして極めて重要なのは「上司との信頼関係」です。

 本気で部下を育てたければ、上司が環境を整備する必要があるのです。

 言い変えれば、上司が部下の育成に責任を負わないから基本を身に付けない若手社員が発生するとも言えます。

 確かに、一生懸命教えてもすぐ辞めてしまう心配はあります。しかしそんなことをいっていたら、いつまでたっても人も組織も成長しません。

部下を詰めていい
上司の怒りから部下が学ぶこと

 信頼関係の構築を大前提として、部下の指導で有効なのが1on1ミーティングです。

 目標数値の達成に対する執着心が薄く、成果も出せていない若手を指導する場合を考えてみましょう。

 最初にやるべきはKPIの点検です。数字が上がらないのは新規開拓が足りないのか、既存顧客のフォローが不十分か、商談数が足りないのか、商談の質が低いのか……。

 目標未達の原因を点検したうえで「新規開拓が足りないから今月は5件アプローチしよう」「既存顧客で十分ポテンシャルはあるから再度、お客様と打合せを入れよう」などと、解決策を具体的な行動レベルまで落とし込みます。

 そして、解決策について「来週の1on1までにこれだけやろう」と実行に移すことを約束するのです。

 次回の1on1で進捗をチェックし、約束した通り進んでいればOK。もしやっていなかったら「約束したことをなぜやっていないんだ? できないことを約束するなよ。次回までに絶対やれることを約束しよう」と「詰める」。これを繰り返していくことです。

 指導の際、怒ってはいけないとよくいわれますが、むしろ私は約束を守らなかったことに対して怒りの感情を見せたほうがよいと考えています。パワハラにならないよう配慮は必要ですが「自分は期待を裏切った」と本人に自覚させる必要があるからです。

 ただし、怒りを伝えた後はすぐに切り替えて「次はどうするか」を冷静に話し合うことも重要です。怒りっぱなしでは何も生まれません。

 ただ、いくら上司が1on1で詰めてもやってこない人はいます。もしそれが3回続いたら、「やっても意味がないから1on1はやめようか」といって、見切りをつけてもよいでしょう。

 これらのプロセスで指導するには、上司自身が業務を深く理解し、適切なKPIを設定できる能力を持っていなければなりません。その意味でも、部下指導は上司の実力が問われる場面と言えます。

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